2004年度 第2分野講評: 審査員 小川忠彦(名古屋大)・中村卓司(京都大)・渡部重十(北海道大)

総評

研究と発表技術(図面,pptの活用,話し方等)は全体的に高いレベルにあると感じました.受賞された発表は少数の審査員が「共感」する部分が多かったものであり,受賞してもおかしくない発表は多数ありました.選に漏れた方もぜひ自信をもって研究を続けてください.研究成果をアピールするために,導入部や結論部において研究内容の新規点や従来との相違点を強調すること,データ処理に基づく結果に満足することなく結果が意味することを深く考察すること,に注意してください.

[オーロラバッジ受賞者発表]

C12-03(鍵谷将人)
ハワイでの観測から,木星のイオプラズマトーラスの共回転遅延に関する世界初の貴重なデータを取得し,Hillモデルをベースに共回転遅延の原因を考察した.更なるデータ解析とより深い考察を期待する.

B21-11(鈴木 臣)
上部中間圏の夜間大気光の観測から希有な大気重力波動現象を見いだし,その発生原因が対流圏活動にあることを推測している.前回の発表と同じ観測データと思うが,まったく違う材料を発見し,過去の研究と比較してユニークなイベントを取り出し,詳細に解析した点が評価される.原因を更に究明することを望む.

B42-02(足立 透)
ROCSAT-2衛星搭載のISUAL装置により,宇宙からのスプライトやエルブスの観測に成功し,貴重な興味あるデータを取得した.プロジェクト全体に精通し,主体的に開発研究を行っているように感じられたので評価した.更なるデータ蓄積や詳細なデータ解析を行い,研究を進展させてほしい.

B42-08(下山 学)
下部電離圏の熱的電子の振る舞いを理解することは重要である.目標を絞ったユニークな機器開発という点を評価した.光電子から熱的電子のエネルギー分布を直接測定する技術を開発することは必須であり,今後も基礎開発を続け,ロケット観測に繋げてほしい.

[その他の発表]

C11-04(佐川)大型の装置をうまく使いこなした,ミリ波による金星のイメージング観測は過去にほとんど行われておらず,貴重な観測例であると思う.初期解析結果の発表であったが,更にデータ解析を進めて研究を発展させてほしい.

C11-03(吉田)先輩の仕事を引き継いでいるようだが,大量のデータを頑張って処理していると感じた.

C11-05(福原)データ解析で地味が作業だが,研究をうまくまとめている.今後の考察に期待する.

C11-06(亀田)機器開発は大変だが重要な仕事である.

B21-03(津田)観測手法の説明がわかりやすかった.

B22-03(阿子島)最新のキャンペーンのデータをよく解析できている.

B22-10(前川)レーダーを用いて,同一磁力線上にある電離圏E層とF層の沿磁力線イレギュラリティの初観測に成功し,貴重なデータを得た.更にデータ解析を進めて,E-F層結合の物理過程の解明に貢献してほしい.

B22-12(小野間)全天カメラで得られた電離圏F層擾乱データとレーダーによるE層沿磁力線イレギュラリティのデータを解析し,両層間の電気的結合を論じており,先駆的な研究と評価できる.最新のキャンペーンのデータをよく解析している.

B22-14(小竹)経度変化を捉える重要な研究.受信機の配置が伝搬方向の統計に影響を与えないかも検討されたい.

B22-15(佐野)ユニークな研究でさらに進めてほしい.

B41-10(西岡)工夫をした解析をして評価できる.残念ながら,12分の発表では解析の詳細がわからず,統計的に有意か説得力が欠けた.発生率にもエラーバーをつけるとこの点がクリアできる.

B42-03(大久保)研究レベルは高く,成果も得ている.研究の重要性と位置づけを時間内に示してほしかった.

B42-06(杉本)的を絞ったユニークかつ重要な機器開発で,積極的に取り組んでいると感じられ,良好な結果も示されている.さらに応用を検討されたい.

D31-P077(太田)、D31-P078(寺石)、D31-P079(池下)GPSデータを利用した電離圏トモグラフィーのアルゴリズム開発は,実用的な観点からも世界的な研究テーマとなっている.いろいろな手法が提案されている中,それぞれの目的にあったアルゴリズムの開発に貢献してほしい.

D31-P091(小笠原)オーロラ降下電子を計測する新しいセンサーの開発・検討である.ロケット実験の結果を期待する.

D31-P157(高橋)高感度の近赤外カメラの開発であり,技術レベルの高さを感じた.今後の観測結果を期待する.

D31-P164(飛山)太陽電波を用いた月の観測であり,その試みに新規性を感じた.観測結果を期待する.