2005年度 第2分野講評
審査員: 今村 剛(ISAS)・ 中村卓司(京都大)・野澤悟徳(名古屋大)・藤原均(東北大)
●総評

 研究内容の濃さと発表技術(図面,pptの活用,話し方等)は多くの学生発表で高いレベルにあると感じました.昨年と比べてもレベルアップしており、聞き応えのある講演が多く、大変結構でした。そのため、受賞者を決めるのに、議論を重ねました。受賞された発表、おしくも受賞を逃した発表は、どれもすばらしいものでした。選に漏れた方もぜひ自信をもって研究を続け、受賞された方々ともども、さらなる成長を目指してください.自分の研究のポイントを常に考え、聴衆の興味等を考慮して、自信を持って元気よく発表しましょう。

●メダル受賞者への講評

C21-08 植松明久
 細かい水滴まで観測可能なミリ波ドップラーレーダーにより海霧を観測し、ロール状構造やバンド状構造をとらえ、その力学構造を論じた。観測結果には大変インパクトがあり、考察には隙がなく、プレゼンテーションも完成度が高い。

C12-08 小竹論季
 Super-DARN radarとGPS TEC観測を組みあわせ、MSTIDの地方時依存性や季節変動を議論した。大量のSuperDARN & GPSデータをまとめて結論を導出している点が評価できる。プレゼンテーションは大変すばらしいものであった。今後さらに研究を進めて欲しい。

A41-04 佐川英夫
 野辺山ミリ波干渉計を用いて、金星上層大気のイメージング観測を行ない、、CO吸収線から上層大気の風速分布やCO濃度分布を求めた。難しい観測と解析をよく考えながらこなしており、得られた成果は世界的にもレベルの高いものである。前回秋学会講演に引き続いた研究と思われるが、着実に研究が進んだようであり、プレゼンテーションも工夫されていて大変すばらしいものであった。

A31-P106 福原哲哉
 マーズグローバルサーベイヤが得た火星大気温度データを解析して、夏極近傍にこれまで知られていなかった東西波数1の波動を発見し、その鉛直伝播と運動量輸送を論じた。ユニークな成果であり、発表内容の一部はすでに論文にまとめられたようである。さらに研究を進め、火星大気ダイナミクスの理解への貢献を期待する。ポスター発表はすばらしいものであった。

●優秀発表者への講評
●口頭発表
C11-05 小笠原桂一
 アバランシェ・フォトダイオードを用いた新たな電子エネルギースペクトル計測器を開発し、それを観測ロケットに搭載し てオーロラ帯であるノルウェーから打上げ、降り込み電子などを観測した。機器開発から携わって良好なデータを得るに至ったことは高く評価され、また電子スペクトルの解釈には深い考察が伺われる。この種の機器開発は分野の発展のために非常に重要なものであり、またプレゼンテーションもクリアーであった。今後のさらなる活躍を期待したい。今後も基礎開発を続け,ロケット観測に繋げてほしい.

C12-03 下山 学
 ロケット搭載用の電子エネルギー分布計測機器の開発。重要な仕事であり、ぜひがんばってほしい。種々に独自の工夫をしているところも見られた。

C21-10 足立 透
 FORMOSAT-2/ISUALにて観測されたスプライトと巨大ジェットの時空構造を研究した。形態の多様性というスプライト現象の本質的問題に取り組み、衛星データの利点を生かした解析を行った。得られた結果は雷放電からスプライトの発生にいたるプロセスの解明に寄与する大変意義深いものである。発表内容、講演時間を含め、プレゼンテーションはすばらしいもの であった。今後も研鑽を重ね、この分野の日本の将来を担う人材へのさらなる成長を期待する。同時にさらに上の受賞を狙ってほしい。

C22-05 寺石周平
 拘束条件を工夫した電離層トモグラフィで興味深い。他の電離層トモグラフィとの得失比較がされるとさらに迫力が増す。

A41-01 松浦浩美
 木星を分光撮像して雲頂高度の分布を求めた。液晶可変フィルターや高速撮像といった新しい手法をよく使いこなしており、得られた結果は貴重なものである。プレゼンテーションもわかりやすい。

A41-09 亀田真吾
 水星のナトリウム大気をハワイ山頂にてファブリペロー干渉計により分光撮像し、その分布の成因を論じた。観測の原理とサイエンスをともによく理解していることが伺われ、研究の今後の発展が楽しみである。

●ポスター発表
A31-P046 近田昌吾
 FORMOSTA-2/ISUAL観測データを用いて、elves形状の特徴を調べ考察を加えた。ポスターはわかりやすくうまくまとめられていた。今後さらにデータ解析を進め、さらに研究を発展させて欲しい。

A31-P052 塚田有司
 D層の負イオンのクラスタ構造を調べるチェンバー実験。貴重な実験室内の研究でありがんばってほしい。

A31-P067 西岡未知
 全球的な電離圏観測を可能とするGPSデータを用いて、プラズマ・バブルの地域による出現特性について調べた。出現頻度の極大を説明するため、各地域の磁力線と日没線のなす角、F領域の電気伝導度、中性風の効果等について詳細に論じている点が高く評価される。

A31-P078 前川暁紀
 中緯度E・F領域における沿磁力線イレギュラリティのカップリング現象をMUレーダーと下部熱圏プロファイラーレーダーを用いたキャンペーン観測から明瞭に示した。また、従来の理論を検証し、観測結果に基づくカップリングのメカニズムを提案した。研究グループ内での自分の役割、キャンペーンの目的・意義も十分に理解していることが伺われた。ポスター発表はすばらしいものであった。

A31-P092 園部 彩
 惑星表面と磁気圏との相互作用の結果維持されていると考えられる水星ナトリウム大気について、観測事実を説明すべく数値計算によって水星表面からの大気の放出機構を調べた。先行研究をよく理解し、水星大気の太陽風応答に関して問題提起するなど興味深い結果である。

A31-P098 冨川善朗
 水星探査Bepi Colomboで搭載する電界観測装置の基礎開発を行い、波形計測のために重要となる位相特性の改善に貢献した。アナログエレキの詳細を理解した上で工夫を凝らして研究を進めており、今後の発展が楽しみである。

A31-P104 金田香織
 IMF反転時の昼側金星電離圏と太陽風の相互作用をとくにIMF反転時にフラックスロープが作られる可能性に着目して、3次元MHFシミュレーションにより、研究を行なった。問題設定自体がユニークであり、リコネクションがフラックスロープを生成するという結果も興味深い。この問題への深い理解が伺われる。ポスター発表はわかりやすくまとめられていた。今後さらに3次元MHFシミュレーションコードの開発/改良を進め、研究を発展させてください。

A31-P112 鍵谷将人
 ハワイでの観測から、イオ周辺のナトリウムコロナ分布にこれまで知られていなかった木星南北方向の非対称成分を見出し、その成因を議論した。ここでの結果は惑星系における大気散逸を理解する上で興味深い。

A31-P113 青井一紘
 イオ周辺から木星磁気圏内にいたる広域なナトリウムの速度分布を観測的に示し、イオからのナトリウム放出メカニズムを議論した。イオ大気とイオプラズマトーラスとの相互作用の後、木星磁気圏へどのように物質輸送が行われるかを考える際に重要な研究と思われる。

A31-P117 木村智樹
 木星起源QP電波バーストについて、統計解析を行なった。発表内容から統計解析を着実に進め、新たな知見を得たことは評価できる。ポスター発表は、非常にすばらしいものであった。