SGEPSS-地球電磁気・地球惑星圏学会
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2008年度 第2分野講評
審査員: 品川 裕之 (情報通信研究機構)、 野澤 悟徳 (名古屋大学)、 三好 勉信 (九州大学)、 渡部 重十 (北海道大学)

●総評
審査員A:

    例年通り、学生諸氏の発表は、よくまとめられており、高いレベルにあった。ただ、独自性、独創性などのアピールが、口頭発表者の中では、やや弱かった印象を受ける。一方、ポスターでは、(1対1であることもあり)このようなアピールをよく理解できた。時間がきてもポスターを掲示していなかった学生が少なからずいたことは残念である。
審査員B:
    口頭、ポスター発表ともに興味深い内容の発表が多かったと思う。しかし、修士課程の学生が多かったせいか(研究期間が短かったせいか)、データ解析・観測事例数の絶対量が少し足りない印象を受けた。今後さらに解析を進めれば、受賞に結びつくと感じられる発表が数多くあった。今後の研究の進展を期待したい。
審査員C:
    全体に内容的に高いレベルの発表が多数あった。論文として発表することを期待する。また,プロジェクトに沿った研究では、全体の中で自分の研究がどの部分なのか明確ではない発表があった。
審査員D:
    プレゼンの技術は年々確実に向上してきていると感じたが、一方で学生自身の個性や情熱があまり伝わってこない印象も受けた。今後、プレゼンの練習とともに、自己アピールにも一工夫あると良いと思う。

●メダル受賞者への講評

北野谷 有吾 (東京大学)
「極冠域電離圏における部分的なプラズマ密度の上昇について」B005-P33

    10年以上にわたるあけぼの衛星データを解析し、極域電離圏高度3000km以上の領域において、電子密度が高くなる現象を発見し、その生成メカニズムを検討した。興味深い現象を発見するとともに、その生成メカニズムの解明を試みたことは、高く評価できる。ポスターおよび説明は高いレベルである。
五井 紫 (京都大学)
「GPSで観測された中緯度域における全電子数増大現象の高度分布についての解析」B005-P32
    地上観測データと低軌道衛星データを組み合わせて、全電子数増大現象の高度分布について明らかにしようとするものであり、新しい試みであり興味深かった。ポスターもよくまとめられていた。また、質疑応答も良く、自分なりによく考えて研究を進めているとの印象をもった。今後、観測事例を増やせば、よりおもしろい研究への発展が期待できる。
越田 友則 (東北大学)
「波形受信機による木星Sバースト観測結果」B009-15
    HF帯の波形が取得可能な波形受信機を製作し木星電波S-burstを観測した。周波数ドリフトから移動体の運動と構造を推定し、その物理的解釈を行った。完成度の高い発表であり論文として投稿することを薦める。
田所 裕康 (東北大学)
「Simulation of water group neutral cloud distribution in Saturn's inner magnetosphere」B009-P29
    土星内部磁気圏の水を含む中性雲の分布について、衛星からのスパッタリング効果を含む詳細なシミュレーションを行ったもので、研究の質も高く、努力の跡が感じられた。発表の説明、質疑応答も明快であった。今後の研究の発展に期待する。
●優秀発表者への講評

奥野 真衣
「発見された二重ドップラー現象の継続的観測と超高層大気効果の確認」(B005-23)

    電波の二重ドップラー現象を用いて、熱圏大気風速のシアーを見積もるという試みは新しく、おもしろかった。発表もよく準備されていて良かった。今後の更なる進展を期待したい。
原田 昌朋
「Development of a Low Energy Particle Electron Spectrum Analyzer onboard the ICI-2 Sounding Rocket」(B005-P021)
    ICI-2ロケット搭載用の低ネルギー電子スペクトルアナライザーを設計、開発し、その動作テスト、および性能評価を一貫して実施した。この装置の開発は、他のロケットにも搭載が期待されており、評価できる。
佐藤 隆雄
「液晶チューナブルフィルターを用いた木星雲構造の観測的研究II」(B009-13)
    兵庫県立西はりま天文台望遠鏡と液晶チューナブルフィルターを用いて、メタン吸収帯(727,890nm)を観測し雲構造の導出を行った。観測、解析ともにレベルの高い発表であった。
木村 智樹
「Responses of Jovian radio emissions to solar wind: approaches for remote monitoring of Jovian magnetosphere」(B009-16)
    UlyssesとGalileo探査機のデータを用いて木星電波と太陽風の関係について調べた。解析・発表ともにレベルが高く、更なる研究成果を期待する。
今井 雅文
「カッシーニ探査機のRPWSデータ解析による木星デカメートル波放射ビームモデル」(B009-19)
    衛星データの詳細な解析とシミュレーションによって、木星電波放射に関する重要な結果が導かれつつあり、着実に研究が進んでいると考えられる。発表も良かった。
今井 浩太
「大型電波干渉計GMRTを用いた木星シンクロトロン放射短期変動の探査2」(B009-P021)
    木星シンクロトロン放射短期変動のF10.7依存性について、JSR観測データの解析を行い、非常に興味深い結果が得られている。結果の定量的解釈が今後の課題であるが、ポスターの図や説明も明快であり、良い発表であった。
木下 武也
「3次元残差循環を用いた成層圏オゾンの輸送に関する研究」(S001-P001)
    過去に定式化された3次元残差循環に新たな改良を加えて、オゾン輸送を調べようとしたもので、発表者の創意・工夫の跡が感じられ、興味深かった。さらに検討を重ね、 オゾンの力学に輸送に関してより正確な見積もりが可能になるように発展してほしい。
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