国土地理院GPS観測網を利用した電離圏電子密度擾乱の観測

*荒牧 徹[1], 大塚 雄一[1], 小川 忠彦[1], 斉藤 昭則[2]
津川 卓也[3]

名古屋大学太陽地球環境研究所[1]
京都大学大学院理学研究科、コーネル大学[2]
京都大学大学院理学研究科[3]

Ionospheric irregularities observed with a GPS network in Japan

*Tohru Aramaki[1] ,Yuichi Otsuka [1],Tadahiko Ogawa [1]
Akinori Saito [2],Takuya Tsugawa [3]
Solar-Terrestrial Environment Laboratory Nagoya University[1]
Faculty of Science Kyoto University,Cornell University[2]
Faculty of Science Kyoto University[3]

We report ionospheric irregularities observed with a GPS network in Japan. Total electron content (TEC) data at every 30 seconds are used for this objective.We compute the rate of change of TEC (Rate of TEC; ROT) for each 30-seconds interval. The Rate of TEC Index (ROTI), which is defined as the standard deviation of TEC for 5-minutes interval, is examined to reveal two-dimensional distribution of the ionospheric irregularities.The ionospheric irregularities were observed on the night of Mar. 31, 2001 during a geomagnetic storm.In the presentation we will discuss statistical characteristics of the ionospheric irregularities revealed by analyzing TEC date in 1999-2001.

 電離圏高度に電子密度の不規則構造がなんらかの理由で存在すると、 衛星電波の受信電界強度や位相の変動が観測される。この現象は シンチレーションと呼ばれる。中緯度での電離圏シンチレーションは 赤道地域や極域にくらべて発生頻度が小さいが、大きな地磁気嵐時 には、時としてGHz帯の電波にまで及ぶようなシンチレーションが 発生することが知られている。本研究では、国土地理院GPS観測網 による全電子数(Total Electron Content;TEC)のデータを 利用して、時間分解能30秒で捉えられる最小スケールのTEC変動の 水平二次元分布を明らかにする。各受信機と衛星間で観測された TECの時系列差分、つまり30秒間でのTEC変動(dTEC/dt)をROT (Rate of TEC)とし、5分間でのROTの標準偏差をROTI (Rate of TEC Index)と定義する。ROTIは電子密度擾乱の 大きさ表すインデックスである。電離圏F領域高度においてGPS衛星 の移動速度は100m/sであるから、ROTIは数qから数十qまでの スケールの電子密度擾乱を表している。2001年3月31日から4月1日 の地磁気嵐時(Dstは31日18:00JSTに最小値-358nT)のROTIを 日本上空の水平二次元分布であらわすことで、以下のような 電離圏電子密度擾乱が見られた。31日の19:25JSTから22:50JSTと 1日2:15JSTから4:15JSTにおいて北海道上空にROTIの変動が現れた。 図に3:05JSTでの例を示す。さらに背景のTECと比較してみると、 1日2:00JSTから3:00JSTに数100qスケールの電子密度変動 (TID)が南向きに速度30m/sで伝搬するのが見られた。このことから、 数qから数十qスケールの電子密度擾乱がTIDの通過後に現れたことが わかる。さらにこの電子密度擾乱は伝搬せず、約2時間維持された。 一方31日の19:00JSTから23:00JSTでは、TIDは見られなかった。 このように、数qから数十qスケールの変動が必ずしもTIDに対応 しているわけではない。さらに大きな約千qスケールの変動とは まだ比較されておらず、今後このスケールでも比較を行う。 我々は1999年以降2年以上にわたるTECデータを蓄積している。 本講演では、これらのデータを用いて電離圏擾乱の発生頻度および 背景のTEC変動との関係を統計的に明らかにする。