広域テフラを伴う火砕流堆積物の古地磁気強度測定

*高井 あすか[1], 浜野 洋三[1], 渋谷 秀敏[2]

東京大学 理学系研究科 地球惑星科学専攻[1]
熊本大学 理学部 地球科学科[2]

Paleointensity measurements of pyroclastic flows co-born with wide-spread tephras from Kyushu, Japan

*Aska Takai[1] ,Yozo Hamano [1],Hidetoshi Shibuya [2]
Department of Earth and Planetary Science, Univ. of Tokyo[1]
Department of Earth Science, Univ. of Kumamoto[2]

In Kyushu Island, Japan, there are many pyroclastic flows co-born with the wide spread tephras, the age of which have been well investigated. Absolute paleointensity determinations of these pyroclastic flows will provide the calibration points for the secular variation curve of the relative paleointensity obtained by the sedimentary cores. We determined the paleointensities using Thelliers' method, for the welded tuffs in the pyroclastic flows co-born with 6 tephra sources, i.e. Aso-1(270ka), Aso-2(140ka), Aso-3(120ka), Aso-4(80ka), Aira-Tn(23ka), Akahoya(6.3ka) tephras. Reliable paleointensity results have been obtained from all sets of the tephras.Their mean paleointensities are 31.0 microT, 18.5 micro T, 30.9 microT, 45.1 microT, 23.5 microT, 37.7 microT, respectively.

 古地磁気強度データには火山岩からと深海底堆積物から得られた 2種類の記録がある。火山岩から得られたデータは強度の絶対値が 得られるが、噴火というイベントに縛られるため、時間スケールで 見るとまばらになってしまう。一方深海底堆積物からは連続した強 度変動データを得られるが、それは相対値である。九州には、広域 テフラと同起源の火砕流堆積物がいくつもあり、それぞれ年代、性 質、分布等が詳しく調査されている。強溶結した火砕流堆積物は噴 出時の熱残留磁化(TRM)を保持しているので古地磁気強度の絶対 値が求められ、また同時に噴出した広域テフラは深海底堆積物に挟 まれているので、変動曲線中のテフラの位置が層序により誤差なく 求めることが出来る。位置のはっきりしているいくつかの点で絶対 強度を対応させると、相対変化曲線を絶対値永年変化にすることが 出来るはずである。そのため、火砕流を伴う広域テフラは深海底堆 積物から得られた相対強度永年変化曲線への良いキャリブレーショ ンポイントになる。
 本研究では6つの広域テフラ[ Aso-1(270ka)、Aso-2(140ka )、Aso-3(120ka)、Aso-4(80ka)、姶良Tn(23ka)、喜界アカ ホヤ(6.3ka) ]と同起源とされる火砕流堆積物の古地磁気強度の 測定をテリエ法を用いて行い、それぞれ信頼できる結果を得た。 Aso-1は31.0±1.2μT、Aso-2は18.5±1.6μT、Aso-3は30.9±2.6 μT、Aso-4は45.1±1.7μT、入戸火砕流(姶良Tnテフラ)は23.5 ±10.3μT、船倉火砕流(喜界アカホヤテフラ)は37.7±3.7μT という古地磁気強度結果が得られた。 岩石磁気実験から求められた磁気ヒステリシス特性は、磁性 粒子サイズが疑似単磁区粒子(PSD)であることを示す。熱磁気分 析から、含まれる磁性鉱物は主にマグネタイトであることが分 かった。この結果からテリエ法に適した試料であり、古地磁気 強度結果が信頼できることが確かめられた。
 33個の深海底堆積物データを合わせ、過去4万年の火山岩デー タの傾きとフィットすることにより絶対値を決定したSint-800と いう古地磁気強度の絶対値変動データとの比較をするため、今回 本研究で得られた強度と伏角から仮想双極子モーメント(VDM) を計算し、年代を横軸に、Sint-800と対比した。その結果を FIgure 1に示す。Figure 1から分かるように、若い2つのデータ はSint-800の曲線と良い一致を見せたが、他の4つのデータは Sint-800と合っていないように見える。この理由について考察す る。