フィリピン海における上部マントル電気伝導度構造
*馬場 聖至[1], 歌田 久司[2], 島 伸和[3], 藤 浩明[4]
市來 雅啓[1], 多田 訓子[5]
海洋科学技術センター固体地球統合フロンティア研究システム[1]
東京大学地震研究所[2]
神戸大学内海域機能教育研究センター[3]
富山大学理学部[4]
神戸大学自然科学研究科[5]
Electrical conductivity structure of upper mantle beneath the Philippine Sea
*Kiyoshi Baba[1]
,Hisashi Utada [2],Nobukazu Seama [3]
Hiroaki Toh [4],Masahiro Ichiki [1],Noriko Tada [5]
Institute for Frontier Research on Earth Evolution, JAMSTEC[1]
Earthquake Research Institute, The University of Tokyo[2]
Research Center for Inland Seas, Kobe University[3]
Faculty of Science, Toyama University[4]
Graduate School of Science and Technology, Kobe University[5]
We re-estimate Magnetotelluric (MT) impedances and one-dimensional
electrical conductivity structures for five OBEM data collected
in the Philippine Sea in 1999 - 2000. We first correct abnormal
electric field signals, timing of record, and line spectra due
to daily and tidal variations, because preliminary analysis by
Tada(2001) showed that there are abnormal signals in electric
field data and some corrections are needed for more accurate
estimation of the MT impedances. As a result, The MT impedances
are significantly improved in compared with the preliminary results.
We invert determinant averages of each impedance tensor to estimate
the structure. We will discuss the character of the structures
beneath the Philippine Sea.
1999-2000年に行われた地震・電磁気合同のフィリピン海横断アレ
イ観測の電磁気データについて詳細な再解析を行い、改めて各観測
点下の平均的1次元構造を推定した。本講演では、改善されたMTイ
ンピーダンスとそれより推定される電気伝導度構造を紹介する。
本アレイ観測では、フィリピン海プレートを構成する3つの海盆、
西フィリピン海盆、四国・パレスヴェラ海盆、マリアナトラフの、
それぞれ2個所で海底電位磁力計(ocean bottom electromagnetometer, OBEM)を用いた観測を行い、パレスヴェラ海
盆の1点をのぞく5点で有効なデータを取得した。初期的な解析は多
田等(2001)によって行われたが、それによると電場データに電極が
原因と思われる異常信号が多数あり、MTインピーダンスの推定精度
を下げている可能性が示された。また、MTインピーダンス推定にお
ける電場南北(x)成分のマルチプルコヒーレンスが0.5以下と信頼性
が低いため、yx成分のMTインピーダンスのみを用いて1次元構造解
析が行われた。
本研究では、電場の異常信号、OBEMの時刻、日変化、潮汐等による
ラインスペクトルについて補正した上で、改めてMTインピーダンス
を改めて推定した。電場の異常信号は、数分から10数分の短時間で
急激に値をバイアスさせ、その後数時間から数日をかけてゆっくり
元のレベルに戻るという性質を有する。目視により異常信号の時間
帯を確定し、適切な値で補完した。その結果、電場のマルチプルコ
ヒーレンスは改善され、東西(y)成分では0.9前後、南北(x)成分で
も0.6以上となった。得られたMTインピーダンスの特徴は多田等
(2001)と大きくは変わらないが、エラーバーが小さくなりより正確
な値が推定された。よってMTインピーダンスの各成分とも信頼でき
る値が得られたとみなし、座標回転に対して独立なデターミナント
アベレージを用いてインバージョンを行い、各観測点下の平均的な
1次元構造を求めた。現時点で得られているモデルは、高電気伝導
度層の深さが、西フィリピン海盆で約100km、パレスヴェラ海盆で
約70km、マリアナトラフで約30kmと、地殻年代依存性を示している
。本講演では今後の解析結果を加えてさらに詳細な特徴についても
議論する。