ジュール加熱率の鉛直分布に依存した中間圏・熱圏結合過程
*藤原 均[1]
東北大学大学院理学研究科[1]
Mesosphere-thermosphere coupling dependent on the height distribution of Joule heating rate
*Hitoshi Fujiwara[1]
Department of Geophysics, Graduate School of Science, Tohoku University[1]
The mesosphere and lower thermosphere (MLT) region and the upper
thermosphere are strongly coupled with each other energetically.
We have investigated the energetic coupling between these regions
through the eddy processes using a one-dimensional mesosphere-
thermosphere model. It was shown that the exospheric temperature
was changed 50 K and 130 K at middle-latitude dependent on the
eddy activity in case of solar minimum and maximum conditions,
respectively. Furthermore, it was found that the height distribution
of Joule heating controlled the eddy effects on the thermospheric
temperature. In this study, we will investigate the mechanism
of Joule control on the eddy processes in the mesosphere and
thermosphere region.
中間圏・熱圏領域には様々なエネルギー過程が存在し、それらに
よってここでの組成、温度構造が決定されている。これまで、中
間圏・下部熱圏(MLT)領域での乱流活動の違いによって引き起こ
される熱圏全域の温度変動について、1次元中間圏・熱圏モデルを
用いて調べてきた。本モデルでは、任意の太陽紫外線強度やジュ
ール加熱の変化に対する組成、温度変動が計算可能である。MLT領
域での乱流活動は渦拡散係数としてパラメータ化される。中緯度
の場合、MLT領域での乱流活動の違いによって引き起こされる外気
圏温度の変動は太陽活動極小時で50K、極大時で130Kであった。ま
た、EISCAT ESRデータによって推定されたジュール加熱率を用い
て極域での計算を行なったところ、中緯度と同様の渦拡散係数を
用いても太陽活動極小時の外気圏温度の変動は25Kとなり、中緯
度に比べ小さくなるという結果となった。その際に用いられた
単位質量当たりの加熱率は400km高度付近で最大となり、低高度で
は小さい加熱となっていた。この熱源分布がMLT領域での乱流過程
が上部熱圏に及んでいく際の影響の大きさを左右しているものと
推定される。比較のために、全球平均したジュール加熱率の高度
分布を5倍し、ESRデータに比べ低高度から高高度まで広範囲に広
がった熱源を用いて同様の計算を行なうと、確かに中緯度と同様
の傾向で、かつ変動幅も大きく計算されることが確かめられた。
1次元の熱圏温度分布は、熱源を持った熱伝導方程式の初期値、
境界値問題として捉えることが出来るが、この熱源の分布によっ
て、解は方程式中のパラメータに依存して多様に変化することを
上記の結果は示している。本研究では、熱源の分布と解の関係を
更に詳細に調べ、中間圏・熱圏のエネルギー的な結合過程の一側
面について考察する。