赤道大気レーダー(EAR)の開発
*橋口 浩之[1], 山本 衛[1], 石原 卓治[1], 津田 敏隆[1]
中村 卓司[1], 深尾 昌一郎[1], 佐藤 亨[2], 萩尾 正廣[3]
薮垣 吉幸[3]
京都大学 宙空電波科学研究センター[1]
京都大学 情報学研究科[2]
三菱電機(株) 通信機制作所[3]
Development of the Equatorial Atmosphere Radar (EAR)
*Hiroyuki Hashiguchi[1]
,Mamoru Yamamoto [1]
Takuji Ishihara [1],Toshitaka Tsuda [1]
Takuji Nakamura [1],Shoichiro Fukao [1],Toru Sato [2]
Masahiro Hagio [3],Yoshiyuki Yabugaki [3]
Radio Science Center for Space and Atmosphere, Kyoto University[1]
Graduate School of Informatics, Kyoto University[2]
Communication Systems Center, Mitsubishi Electric Corporation[3]
We have developed the Equatorial Atmosphere Radar (EAR) and
installed it near Bukittinggi, West Sumatra, Indonesia (100.32E
and 0.20S). The EAR is a large monostatic Doppler radar with
the frequency of 47 MHz and the peak output power of 100 kW.
The EAR has a circular antenna array of approximately 110 m
in diameter, which consists of 560 three-element Yagi antennas.
It is an active phased array system with each Yagi driven by
a solid-state transceiver module. This system configuration
makes it possible to direct the antenna beam by electronic control
up to 5,000 times per second.
1. はじめに
赤道域の中でも特にインドネシア海洋大陸と呼ばれる西太平洋域
は、積雲活動が地球上で最も活発で大気大循環の駆動源と言われて
おり、気候変動にも重要な役割を果たす。しかしながら、観測
データの不足から大気変動のメカニズムはまだ明らかになって
いない。そこで、我々はMUレーダー観測の経験を活かし、大気
運動・波動を高精度に連続観測可能な赤道大気レーダー
(Equatorial Atmosphere Radar; EAR)を開発し、西スマトラ州の
ブキティンギ(100.32E, 0.20S, 海抜865m)に設置した。
2. 赤道大気レーダーシステム
赤道大気レーダーはアンテナアレイ装置、送受信装置、変復調
装置、信号処理装置から構成される。中心周波数は47.0MHz、
送信パワーは100kWである。アンテナアレイ装置は、560本の
3素子八木アンテナから構成されており、それぞれのアンテナは
直径110mの円形敷地内に一辺4.5mの正三角形の格子点上に配置
されている。各アンテナ素子に送受信モジュールを取り付けた
アクティブ・フェーズド・アレイ方式を採用しており、ビーム
方向を最大5000回/秒の高速で連続的に走査可能である。図に
示すように、送受信装置では信号を24ずつ2段階で分配・合成し
(24x24=576)、そのうちの560がアンテナに接続される。変復調
装置では、送信種信号の生成、受信信号の増幅、検波、A/D変換、
FFT、積分処理等を行なう。信号処理装置は、ワークステーション
とその周辺機器から構成され、レーダー装置全体を制御・監視し、
変復調装置から送られてくるデータを1次処理し、データを補助
記憶媒体に記録する。
3. まとめ
赤道大気レーダーは本年3月末から試験観測を開始し、ラジオ
ゾンデとの風速比較等からその動作性能が検証された。7月初め
から連続観測を開始し、8月には再度ラジオゾンデとの同時観測
実験を行った。講演では、ゾンデデータとの比較結果等も示す
予定である。