始動した赤道大気レーダー
(Equatorial Atmosphere Radar; EAR)
*深尾 昌一郎[1], 津田 敏隆[1], 山本 衛[1]
中村 卓司[1], 橋口 浩之[1], 堀之内 武[1], 親松 昌幸[1]
佐藤 亨[2], Adi Sadewo[3], Munir Muzirwan[3]
Mahdi Kartasasmita[3]
京都大学 宙空電波科学研究センター[1]
京都大学 情報学研究科[2]
National Institute of Aeronautics and Space (LAPAN), Indonesia[3]
Equatorial Atmosphere Radar (EAR)
*Shoichiro Fukao[1]
,Toshitaka Tsuda [1],Mamoru Yamamoto [1]
Takuji Nakamura [1],Hiroyuki Hashiguchi [1]
Takeshi Horinouchi [1],Masayuki Oyamatsu [1],Toru Sato [2]
Adi Sadewo [3],Munir Muzirwan [3],Mahdi Kartasasmita [3]
Radio Science Center for Space and Atmosphere, Kyoto University[1]
Graduate School of Informatics, Kyoto University[2]
National Institute of Aeronautics and Space (LAPAN), Indonesia[3]
The western Pacific region called the Indonesian Archipelago
is the center of the intense atmospheric motions and global
atmospheric changes. However, the mechanisms of the atmospheric
changes and fluctuations have not yet been made clear due to
the sparseness of observation data in that region. Recently,
we have completed a new profiler radar called the Equatorial
Atmosphere Radar (EAR) right at the equator near Bukittinggi,
West Sumatra, Indonesia. The EAR is a monostatic pulsed Doppler
radar at the frequency of 47 MHz for study of the equatorial
atmosphere.
1. はじめに
「インドネシア海洋大陸」と呼ばれる西太平洋域は、赤道域の
中でも特に積雲活動が活発で、大気大循環の駆動源とされている。
しかしながら、観測データの不足から大気変動のメカニズムは
まだ充分明らかにされておらず、高時間分解能で大気の3次元運動
を連続観測することが求められてきた。そこで、我々はMUレーダー
観測で培った技術を活かし、大気運動・波動を高精度に連続観測
可能な『赤道大気レーダー(Equatorial Atmosphere Radar; EAR)』
を新たに開発し、インドネシア航空宇宙庁(LAPAN)の協力により、
インドネシア共和国西スマトラ州のブキティンギ(100.32E, 0.20S, 海抜865m)に建設した。
2. レーダーシステムの概要
赤道大気レーダーは560本の3素子八木アンテナを直径約110mの
略円形フィールドに配置したアンテナアレイを有している。各
八木アンテナの基部にそれぞれ半導体送受信モジュールが配置
された、アクティブフェーズドアレイ構成を取っており、電子
制御によってアンテナビーム方向を最大5000回/秒の速度で高速
に走査できる特長を持つ。中心周波数は47MHz、ピーク送信電力
は100kWであり、大気乱流等からの散乱エコーを受信することで、
高度1.5〜20km範囲を連続観測できる他、電離圏E及びF領域の
FAI(沿磁力線イレギュラリティ)の観測も可能である。(レー
ダーシステムの詳細は橋口他[本予稿集]を参照。)
3. まとめ
赤道大気レーダーは本年3月末から試験観測を開始し、7月初め
から赤道域大気の連続観測を行っている。近年、高精度で大気を
連続観測可能な大気レーダーをネットワーク展開する努力が、
アメリカ、オーストラリア、日本他の研究者によってなされて
いる。そのようなネットワークの一つは、米国NOAAが中心に
なって南アメリカのペルーからインドネシアのビアクにかけての
4ヶ所で運用している環太平洋ネットワークである。また、感度
は落ちるが同種のレーダーがインドやタイでも運用されている。
しかしながら、それらがカバーする範囲からは東南アジア、特に
インドネシア域が欠落していた。今後、赤道大気レーダーが赤道
域大気レーダーネットワークの中心として重要なデータを提供
することとなり、赤道域における大気変動メカニズムの解明が
進展するものと期待されている。