あけぼの衛星搭載直交ワイヤアンテナの実効長

*東 亮一[1], 井町 智彦[1], 八木谷 聡[1], 長野 勇[1]
木村 磐根[2]

金沢大学工学部[1]
大阪工業大学情報科学部[2]

Effective lengths of wire antennas onboard Akebono

*Ryoichi Higashi[1] ,Tomohiko Imachi [1]
Satoshi Yagitani [1],Isamu Nagano [1],Iwane Kimura [2]
Kanazawa University[1]
Osaka Institute of Technology[2]

The VLF instruments onboard Akebono are designed to observe VLF/ELF plasma waves and to determine wave normal direction of the waves. The sensors for VLF electric fields are crossed two pairs of dipole antennas. To obtain absolute intensity of electric field, we need effective lengths of dipole antennas. However it is not easy to estimate the values of effective lengths in plasmas, and a few researches about it have been made. In these researches, the effective lengths of two dipole antennas have been assumed the same. In this study, we obtain the effective lengths of each of dipole antennas separately, which is very important to determine the wave normal direction and Poynting flux. We will discuss the calculate method and results.

科学衛星あけぼの(EXOS-D)は、地球磁気圏のプラズマ中における粒 子や電磁波動の振舞いを精密に観測する為に1989年に打ち上げられ た。あけぼの衛星に搭載された低周波プラズマ波動観測装置(VLF) は、VLF/ELF帯のプラズマ波動の観測、kベクトルの決定等の為に設 計されている。VLF/ELF帯の電界を観測するセンサは、ワイヤアン テナを用いている。このワイヤアンテナは、それぞれの長さが30m の4本のアンテナエレメントで2組の直交ダイポールアンテナ (Tip-to-Tip 60m)を構成している。ダイポールアンテナにより観 測された波動からkベクトルやポインティングフラックスを正確に 決定する為には、正確なアンテナの実効長を知る必要がある。しか し、プラズマ中のダイポールアンテナの実効長は正確に分かってい ないのが現状である。これまでにもあけぼの衛星のワイヤアンテナ の実効長を推定する研究は行われてきたが、2組のアンテナの実効長 は同一のものであると仮定しての研究であった[1]。衛星上のワイヤ アンテナが正確にどのような状態になっているは分かっていない為、 2組のアンテナの実効長を独立に求める事は重要である。本研究で は、プラズマ波動の磁界成分とプラズマのパラメータから計算によ りの電界成分を推定し、観測した電界成分との比からアンテナの実 効長をそれぞれ独立に求める。
本研究では、船舶ナビゲーション用信号であるオメガ信号を用いて 実効長を求める。オメガ信号はその周波数や送信時間などが分かっ ている為、本研究で用いる波動として適切なものである。今回利用 した波動は、周波数10.2kHzの波動であり、波長はワイヤアンテナ の全長よりも十分に長いものとなっている。また本研究では、観測 したオメガ信号をホイスラモード波として扱っている。
あけぼの衛星に搭載されている磁場計測装置(MGF)は、地球磁場3 成分を計測していて、地球磁場からサイクロトロン周波数を求める 事ができる。また、高周波プラズマ波動(PWS)観測班より提供され た電子密度から、プラズマ周波数を求める事ができる。以上のパラ メータが分かれば、比誘電率を求める事ができ、またコールドプラ ズマ近似を用いて分散関係式より屈折率を求める事ができる。VLF のサブシステムである波動伝搬ベクトル観測装置(PFX)は、電界2 成分、磁界3成分を同時観測する事ができる。観測したオメガ信号 は単一波面の円偏波であるから、磁界の偏波面からkベクトルを求 める事ができる。プラズマ中におけるMaxwellの方程式を用いると 、屈折率、比誘電率、kベクトル、磁界3成分をパラメータとして、 電界3成分を理論的に求める事ができる。このようにしてMaxwell の方程式より求めたアンテナ方向の電界2成分と実効長を30mとし てアンテナで観測した電界2成分との比を求める事で、2組のワイ ヤアンテナの正確な実効長をそれぞれ独立に求める事ができる。 計算結果では、それぞれの実効長はアンテナ全長の約半分という 結果が得られた。発表では、これらの計算方法及び計算結果等を 報告する。
なお本研究に使用した電子密度データは東北大学の森岡 昭教授に 提供して頂いた。ここにお礼を申し上げます。

[1]T.Omae, et al., IEICE, A.P93, 119, 1994