地球ヘクトメートル電波における非線形モード変換過程
*飯島 雅英[1], 大家 寛[2]
東北大学[1]
福井工業大学[2]
Nonlinear Mode Conversion Processes in the Origin of the Terrestrial Hectometric Radiations
*Masahide Iizima[1]
,Hiroshi Oya [2]
Tohoku University[1]
Fukui University of Technology[2]
In the spectra of THR, intense discrete components have been
identified in two frequency bands, from 1.3MHz to 2.1MHz(1.7MHz
band) and from 2.6MHz to 4.2MHz (3.4MHz band) forming a harmonic
relation in the frequency. The fundamental band emission and
the second hamonics show the nature of the L-O mode wave and
the R-X mode wave, respectively. The origin of fundamental
band emissions can be attributed to the the strong wave particle
interactions of UHR mode waves at the frequency which is very
close to twice the local electron cyclotron frequency. The
generation process of the second harmonics includes non-linear
processes in the mode conversion from electrostatic plasma waves
into R-X mode electromagnetic waves.
[序] 地球ヘクトメートル電波(THR)は、極域の電離層上層部で観測され、通常1.0MHz から5.5MHzまでの広い周波数範囲にわたって、弱くdiffuse でbroad なスペクトルを示すのが一般的である。しかし、このTHRのスペクトル中に、相互に高調波関係にある2つの周波数領域、1.3MHz から2.1MHz(1.7MHz band)と2.6MHzから4.2MHz(3.4MHz band)に、通常の強度に対して約10dBから20dB強い discrete な放射成分が存在することが見い出された。基本波はL-O モードの偏波を示し、一方、2倍の高調波はR-Xモードの偏波を示している。この様な例は、1989年3月より1994年6月の期間に51例あり、その多くが巨大磁気嵐に伴って発生している。
[放射機構]この様なTHRの放射機構として、基本波である1.7MHz band は、その起源となるUHRモードの波動の周波数が電子サイクロトロン周波数の2倍に一致する時に生ずる強い波動粒子相互作用の結果発生し、その後線形モード変換過程によって電磁波となると考えられる。1.7MHzという周波数は、地球のオーロラ粒子降り込み領域においてこの条件により必然性をもって選択されている可能性が高い。またその2倍の3.4MHz bandのTHRは、1.7MHz band のプラズマ波動が波動波動相互作用の非線形プロセスを通じて電磁波に変換して生じると考えられる。この2倍の高調波への非線形モード変換効率について検討した結果、磁力線に対しほぼ直角に伝播するUHRモード波が起源となる場合には、R-Xモードへの変換効率がL-Oモードへの変換効率よりも20dB以上大きくなることが判明した。この変換過程による場合、あけぼの衛星で観測された3.4MHz bandの放射強度は、source領域に、20mV/mのUHRモード波が存在する場合に可能であることが示された。