FM-CWレーダーを用いた電離層電場観測の開発研究

*石原 隆一[1], 森 一浩[1], 吉川 顕正[2], 篠原 学[3]
野崎 憲朗[4], 湯元 清文[2]

九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻[1]
九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門[2]
名古屋大学太陽地球環境研究所総合解析部門[3]
通信総合研究所[4]

Study of Ionospheric Electric Field by Using FM-CW Radar Array

*Ryuichi Ishihara[1] ,Kazuhiro Mori [1]
Akimasa Yoshikawa [2],Manabu Shinohara [3]
Kenro Nozaki [4],Kiyofumi Yumoto [2]
Graduate School of Sciences, Kyushu University[1]
Faculty of Sciences, Kyushu University[2]
Solar-Terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University[3]
Communications Research Laboratory[4]

In order to understand the generation and propagation mechanisms of electromagnetic variations, the CPMN (Circum-pan Pacific Magnetometer Network) group is planning to build up a FM-CW (Frequency-Modulated Continuous Wave) radar array along the 210°magnetic meridian. By using the FM-CW radar array, we can deduce ionospheric electric field fluctuations with more accurate time resolution, compared with usual ionosonde observations. The first FM-CW radar was installed by CRL at Cebu, and the second one is now being set at Sasaguri, near Kyushu University. Our project also focuses on contribution to the Space Weather study especially around the earth's space environment.

 我々の研究グループでは、環太平洋の54観測点での地磁気微少変 動観測に基づく、グローバルな地球電磁場環境の変動、また太陽風 擾乱エネルギーの赤道域への侵入過程等の観測研究を行っている。 しかしながらこれまでは、電離層電場を直接観測する手段を持たな かったため、地上で観測される磁場変動の内、電離層電流に起因す る変動が、電離層の電気伝導度の変化によるものなのか、それとも 電場変動によるものなのかを直接同定する事が出来なかった。そこ で我々は、FM-CW(Frequency-Modulated Continuous Wave)レー ダーを赤道から極域まで経度方向に約10度置きで多点配置し、電離 層電場を地上で多点同時観測する事で、これらの原因を究明しよう と計画している。この計画は、究極的には太陽風変動による地球電 磁場環境変動(宇宙天気)の予報を実現しようとするものである。
 そのためのFM-CWレーダーが現在磁気赤道上のフィリピン、セブ 島に置かれており、福岡県篠栗町においても今秋建設工事が完了し 、無線局免許が下りる。また、2002年にはオーストラリアにも建設 される予定である。
 FM-CWレーダーの原理は、基本的には従来の イオノゾンデ観測と同様、HF帯の掃引電波を送信して、電離層での 鏡面反射によるエコーを観測し、電離層高度を求めるというもので ある。従来のイオノゾンデ観測では、周波数が固定されたパルス電 波を順次送信していたため、電離層の高度ごとのプロファイルを求 めるために時間がかかった。それに対してFM-CWレーダーは、周波 数を直線的に掃引しながら連続的に電波を送信する事ができるとい う特徴がある。従って、電離層高度だけでなく電離層電場をも観測 する事が可能になる。
 FM-CWレーダーにおいて、観測モードは二 つある。一つはイオノゾンデモード、そしてもう一つはドップラー モードである。イオノゾンデモードは、前述のイオノゾンデ観測と 同様、HF帯の掃引電波を送信し、電離層での鏡面反射によるエコー の高度を観測する観測方式である。このFM−CWレーダーはイオノゾ ンデ観測と違い、周波数を直線的にすばやく掃引しながら電波を送 信するため、電離層高度の細かい時間変動から電離層電場を見る事 ができる。
 一方ドップラーモードでは、さらに高い時間分解能 での観測が可能である。イオノゾンデモードでは、掃引する周波数 帯が10MHz単位と広いため、1回の掃引で数分かかり、それより短 周期の高度変化は観測できない。しかし、ドップラーモードでは、 イオノゾンデモードと同様に周波数を掃引しながら電波を送信する が、100kHz程度の範囲の狭い周波数帯を1秒以内に掃引する。従っ て観測高度は狭くなるが、1秒以内の時間分解能で観測が可能にな る。この結果、ULF周波数帯の地磁気脈動を電場で観測し、磁場観 測と直接比較するという新しい展開も考えられる。
 本発表では 、FM-CWレーダーの各モードの簡単な理論と、電場解析の方法、ま た篠栗で得られた最新のデータ等を紹介する。