衛星搭載用地下探査レーダ開発のための信号処理法の研究

*石川 龍也[1], 八木谷 聡[1], 長野 勇[1], 小嶋 浩嗣[2]
松本 紘[2]

金沢大学工学部[1]
京都大学宙空電波科学研究センター[2]

Signal Processing Techniques for a Satellite-borne Subsurface Radar

*Tatsuya Ishikawa[1] ,Satoshi Yagitani [1],Isamu Nagano [1]
Hirotsugu Kojima [2],Hiroshi Matsumoto [2]
Kanazawa University[1]
Radio Atmospheric Science Center, Kyoto University[2]

We consider a subsurface radar onboard satellite to investigate the planet's subsurface structure. Since higher frequency waves are more attenuated under the ground while the size of a radar antenna onboard satellite is limited, here we use an HF radar operating in the frequency range around 10 MHz. It is important to extract weak subsurface echo signals from intense surface reflection echoes. We use the pulse compression technique to improve the S/N ratio and the time resolution of the subsurface echoes. We will discuss the characteristics of these pulse compression methods, such as the relationship between the background noise level and the radar S/N ratio. We will also discuss the possibility of applying the MUSIC (Multiple Signal Classification) method to the analysis of the received echoes.

近年の惑星探査衛星による観測の結果、月や火星、木星の衛星の一つで あるエウロパの地下に氷や水が存在している可能性が示唆されている。 水が存在していれば何らかの生命体が存在している可能性があるため、 大きな関心が寄せられている。また、惑星の形成過程や進化過程を知る 上で惑星の地下構造を探査することが非常に重要であると考えられる。 本研究では、衛星上から惑星深地下構造を探査するレーダシステムを 開発するにあたり、不均質深地下媒質における電磁波伝搬の数値計算や S/N の向上を目的とした信号処理方法の検討を行い、実際のシステム デザインに活用することを目的としている。深地下では高周波の電磁波 は減衰しやすいという電磁波伝搬上の制限や、衛星搭載によるアンテナ サイズの制限を考慮し、周波数 10MHz(波長30m) 程度の電磁波を用い ることにした。送信パルス幅を小さくすればレーダの距離分解能が上が るが、エネルギーが減少するため S/N が悪化する。この相反する条件 を満たすためパルス圧縮を用いる。パルス圧縮では、送信時にパルスを 変調し、受信時に相互相関を取ること(Matched Filter 処理)で鋭く 大きな値の相関パルス信号が得られる。パルス持続時間を長くして総 エネルギーを大きくすることで、S/N を向上させることが可能となる。 解析で用いたパルス圧縮は、チャープ変調、M系列、Complementary系列 などである。また、多重波の伝搬遅延時間を高精度に推定する方法とし て MUSIC (Multiple Signal Classification) 法があげられる。 MUSIC 法は高分解能スペクトル推定法として信号の到来方向推定などに 用いられているが、時間領域推定に応用することにより、従来から用い られている Matched Filter 処理よりも高精度に反射パルスを抽出 することが可能になると考えられる。本発表では、深地下媒質中に おける電磁波伝搬および境界面における反射や透過を解析し、深地下 媒質からの弱い反射エコーをパルス圧縮や MUSIC 法を用いて抽出 する方法などについて報告する。