パソコンでできるインターネットVLBIシステムの開発
*近藤 哲朗[1], 小山 泰弘[1], 関戸 衛[1], 中島 潤一[1]
大久保 寛[1], 大崎 裕生[1], 木村 守孝[1], 市川 雄一[2]
通信総合研究所鹿島宇宙通信研究センター[1]
日本通信機株式会社[2]
Development of the PC-based new real-time VLBI technique using the Internet Protocol
*Tetsuro Kondo[1]
,Yasuhiro Koyama [1],Mamoru Sekido [1]
Junichi Nakajima [1],Hiroshi Okubo [1],Hiro Osaki [1]
Moritaka Kimura [1],Yuichi Ichikawa [2]
Kashima Space Research Center, Communications Research Laboratory[1]
Japan Communications Equipment Co., Ltd[2]
Communications Research Laboratory has been developing a new
real-time VLBI system using the Internet Protocol (IP-VLBI).
The PCI sampling board that we are developing has a maximum sampling
frequency of 16 MHz per channel, and a system equivalent to the
current geodetic VLBI is achieved by use of 16 channels. Real-time
data transmission and a coherent sampling up to 16 MHz sampling
have been checked by present. Regarding a software correlation
processing, we have prospect of real-time processing up to 4
MHz sampling at present. The processing algorithm is reexamined
in order to attain improvement in the speed.
通信総合研究所ではパソコンおよびインターネット・プロトコル(IP)
を利用した汎用の実時間VLBIシステム(IP-VLBI)の開発を行って
いる。通常のVLBI観測では、2局以上のアンテナで受信された電波
天体からの信号は磁気テープに記録され、それらのテープが相関処理局
に送られ、相関処理が実行される。地殻変動の定常観測用途に開発され
た実時間VLBIシステムでは、電波星からの信号は256Mbpsのディジ
タル信号に変換され、それらは磁気テープに記録する代わりに高速
(2.4Gbps)非同期転送モード(ATM)ネットワークを通して実時間に相関
処理局に転送される。相関処理局ではATMネットワークに接続された
専用の相関器が、実時間に相関処理を行う(この実時間VLBIシステム
を“ATM-VLBI”と呼ぶ)。高速ATMネットワークの使用料は未だに高価
であり、接続サイトも制限されるため、ATM-VLBIはまだ一般に普及する
ところまでは至ってない。そこで、ネットワーク利用コストの低減、
かつ接続サイトの拡充を目指し、またVLBI技術を汎用化するため
に、既に広く普及しているIP技術と更にパソコンを使用した新方式の
実時間VLBIシステムの開発を開始した(このシステムを
“IP-VLBI”と呼ぶ)。
IP-VLBIとして2種類のシステムが考えられる。1つはATMネット
ワークに載せている高速データストリームを単にIPプロトコルでの伝送
に置き換える方法である。この方式では単に高速にデータを転送する
方式であるため、例えば多チャネルのデータから構成される測地VLB
Iのデータの場合にはその処理に専用の周辺装置が必要となる。
もう一つの方式は、低速(狭帯域)におけるVLBIシステムを
確立し、広帯域が必要な場合は、狭帯域システムを必要数だけ並列運用
するという方式である。例えば測地VLBIシステムでは、通常S (2GHz) およびX (8GHz)バンドで併せて14〜16の周波数チャネルを受信する
が、それぞれのチャネルデータを独立して送信し、相関処理を行うこと
により容易に測地VLBIを実現できる。この方式では一つのチャネル
データに関してシステムを確立することにのみ技術開発を集中すれば
よい。また、実時間VLBIの用途以外にも、高精度な時刻ラベルと
ともにデータの記録が行える汎用のデータレコーダとしても使用する
ことができ、地球物理現象の様々データ収集において役立つであろう。
我々が開発中のIP-VLBIシステム用のサンプリングボード(PCIバス
ボード)は、最大16MHzサンプリングが可能であり、ボードあたりの
チャネル数は4chである。サンプリングボード部の様々な評価試験と
並行して、パソコンでの実時間相関処理ソフトを開発している。現在
までに研究室内LANでの1ビット16MHzサンプリングデータの実時間
転送およびコヒーレントサンプリングが確認できた。パソコンによる
完全ソフトウェア相関処理も4MHzサンプリングデータまでは実時間
相関処理が可能である見込みを得た。更に高速化を図るためアルゴリ
ズムの再検討を行っている。