鹿児島地震における 地磁気変換関数の時間変動
*才田 克昭[1], 湯元 清文[1]
環太平洋地磁気ネットワークグループ
九州大学[1]
Temporal Variations of Geomagnetic Transfer Functions Associated with the Kagoshima Earthquakes earthquakes
*Katsuaki Saita[1]
,Kiyofumi Yumoto [1]
Circum-pan Pacific Magnetometer Network Group
Kyushu University[1]
In this study, we have analyzed temporal variation of geomagnetic
transfer functions associated with Kagoshima earthquakes at the
frequency range of Pi 2 magnetic pulsation during from the interval
of Feb.1 to May.31, 1997. In that period, four moderate or large
earthquakes occurred, which magnitudes were more than 5 or 6.
Geomagnetic transfer function can be expected to change with
a variation of conductivity structure in the seismic region before
the earthquake. We found that the transfer function Bu, a real
coefficient of east-west component, have became decreasing before
the moderate earthquakes.
1997年2月から5月にかけて鹿児島県において、震度5ない
し6以上の地震が、あわせて4回発生した。本研究では、同期間に
鹿児島(垂水)地磁気観測所で観測された地磁気変動成分から、
Pi2地磁気脈動について地磁気変換関数を計算し、その時間変動
と地震活動との関係を調べた。
地震活動領域においては、地殻の微小破砕により地下水の流入や
地殻温度の変化等が生じ、活動域付近における地下電気伝導度構造
の変動が考えられる。通常、地球中心へと向かう鉛直方向への電気
伝導度構造の変化は、地上における磁場変動になんら影響を及ぼさ
ない。しかし、水平方向への伝導度構造の変化が考えられる場合、
地球外に起源をもつ磁場変動の侵入により地上に励起される誘導電
流は、水平方向に一様とはならず、不均質な電流構造を持つ。その
結果、地上では鉛直方向の誘導磁場変動が観測されることになる。
地震活動領域においても水平方向への電気伝導度構造の変化がある
と考えられ、地上磁場に影響を与えていると推測される。
地下における電気伝導度構造の、地上磁場に対する寄与を表す係
数として用いられているのが、地磁気変換関数である。地球外磁場
の成分は水平方向成分のみという近似のもとに、磁場三成分から求
められる。三成分の関係は線形方程式で表され、入力である南北、
東西の水平成分に対し、鉛直成分が出力となる。地磁気変換関数は
入力側の二成分の係数であり、観測点固有の値を持つ。地下電気伝
導度構造の変動により、鉛直方向成分が変化するなら、同時に地磁
気変換関数の変動となって現れることが期待される。
解析においては、入力磁場の平面波近似を最大限保つため、入力
として全世界的に同時観測される、Pi2地磁気脈動を用い、計算
を行った。Pi2の選別には、(1)周期が40〜150秒の振動
であること、(2)鹿児島の地方時で19時から翌朝6時までに発
生したものであること、(3)東西、南北の磁場変動の二乗和が、
0.12以上であること、以上三つの条件を設け、これにより選ば
れた脈動の数は4ヶ月間で632個であった。
地磁気変換関数の4ヶ月における平均変動を求めた結果、南北成
分の平均値は約−0.1、東西成分は約0.4であった。解析期間
中、南北成分はほぼ同じような値を示していたが、東西成分におい
て、4月2日の地震(M5.5)前にその値が−0.2まで減少し
前後に大きな地震は起きていないが、2月25日にも−0.2付近
の値をとっていた。この原因については現在検討中である。