並列有限要素法によるダイナモシミュレーションコードの開発
- 磁場に対する境界条件の検討 -
松井 宏晃[1]
(財)高度情報科学技術研究機構[1]
Development of a Simulation Code for the Geodynamo using Parallel FEM
- Investigation of Boundary Condition for Magnetic field -
Hiroaki Matsui[1]
Research Organization for Information Science & Technology[1]
We have been developing a simulation code for the geodynamo
process based on GeoFEM, which gives a finite element method
(FEM) platform for massively parallel computers. When the MHD
simulation is carried out using FEM, it is an important problem
how to treat a magnetic boundary condition on the boundaries
of the fluid shell. To connect a potential magnetic field outside
of the shell, a simulation box is extended to the outside of
the fluid shell. In this study, we investigate an accuracy of
magnetic field. The results shows that only dipole field depends
on the size of simulation box, and that the magnetic field has
only 3% of deviation when we set the radius of the simulation
box to be 5.6 times to that of the fluid shell.
1. イントロダクション
これまで、回転球殻内のMHDシミュレーションではほとんどの
場合球面調和関数展開が適用されてきた。しかし、球面調和関数
展開は、シミュレーション空間全体を参照するモデルであるため、
大規模並列計算に適さないという欠点が指摘されている。一方、
有限要素法(FEM)は局所計算処理を本質とする手法であり、かつ、
非構造格子を取り扱うため、任意に領域分割が可能であり、並列
計算に適した手法である。そこで、我々は並列有限要素法を用い
た回転球殻におけるMHDシミュレーションコードを大規模並列
有限要素法のプラットフォームである GeoFEM を用いて開発して
いる。ここで、有限要素法を用いて磁場のシミュレーションを
実施する場合、磁場の境界条件として球殻の外部のポテンシャル
場に接続する事が困難となる。このため、球殻の外部についても
離散化を行い、磁気ポテンシャルに対するPoisson方程式を解く
必要が生じ、また、無限遠方に対する取り扱いを考慮する必要が
生じる。無限遠方に対する取り扱いとして、i) 無限遠方を写像
した無限要素を適用する ii) 十分遠方まで有限要素分割する
の2つの手法が考えられるが、本研究ではii)の手法を用い、
有限要素分割が必要な領域の大きさの検討を実施した。
2. 解析手法
本研究においては、空間をTri-linear 要素を用いて離散化する。
離散化に際しては、球面上に6面体を投影し、これを半径方向に
積み上げることによって得られる格子パターンを用い、中心に
おいた立方体の有限要素格子と接続することにより、半径r_max の球体を離散化する。このうち、外核に対応する球殻部分とし
て、r_i = 2/3 < r < r_0 = 5/3 の領域を考える。また、計算
領域として、r_maxを5.6から17.6の範囲で設定して比較を
実施する。解析に際しては、CMBに相当する r=r_o の球面上に
おいて球面調和関数により表現されるポテンシャル場を境界条件
として与え、Poisson方程式を解く。本研究で焦点となる領域は
CMB付近の磁場であるので、CMBの直上の層における磁気ポテ
ンシャル及び磁場のr成分を解析的に得られる解との比較を実施
する。
3. 結果
解析により、以下の結果が得られた。
1) 計算領域の大きさ r_max に対する誤差の依存性は r_max < 10 の場合の双極子成分にのみ見られ、より高次の成分に
関しては計算領域に対する依存性は現れない。
2) 高次の成分に関しては、計算領域の大きさよりもむしろ
CMB付近における有限要素格子の解像度にその精度が決定される。
3) 双極子成分に対する誤差の大きさは r_max=9.6 とした場合
に磁気ポテンシャルでは0.1%, 磁場に関しては3%程度となる。
これらの結果は、磁気ポテンシャルが高次の成分ほど半径rが
大きくなるほどに対して急速に減衰することによるものであると
考えられる。また、本研究で用いた有限要素格子の解像度に
おいては、計算領域の大きさを r_max=9 程度(およそ5.6r_o に相当する)まで考えればCMB近傍での磁場は十分表現出来る
と考えられる。