ハワイにおける木星衛星イオ起源ナトリウム・クラウドの連続光学観測

*三澤 浩昭[1], 野澤 宏大[1], 高橋 慎[1], 岡野 章一[1]
森岡 昭[1]

東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センター[1]

The Jovian remote sodium emission:
3-week successive observation in Hawaii

*Hiroaki Misawa[1] ,Hiromasa Nozawa [1],Shin Takahashi [1]
Shoichi Okano [1],Akira Morioka [1]
Planetary Plasma and Atmospheric Research Center, Tohoku University[1]

One of the Galilean satellites and a volcanically active satellite, Io, is known as the major plasma source in Jupiter's magnetosphere. Sodium shows bright emission in the visible wave range, so sodium gas is one of good samples to investigate characteristics of the volcanic gases. A series of imaging observation of the sodium gas emission were successfully made for about three weeks from Dec. 2000 to Jan. 2001 on the summit of Haleakala, Hawaii using the wide field imaging camera (FOV=7deg=1000 Jovian radii). The purposes of the observation are investigations of gas release process and successive monitor of variation of gas amount. We will show outline of the observation, results, and expected gas dynamics.

 木星の衛星イオは活発な火山活動で知られるが,この火山活動 を起源として木星磁気圏に流出する火山性ガスが木星磁気圏プラ ズマの90%以上を占めるとされる。この火山性ガスの中ではマイ ナーな成分ながら共鳴散乱断面積が大きい中性ナトリウムは可視 域で明るい発光を示し,火山性ガスの特性を研究する上で良いサ ンプルとなっている。
 当研究グループでは,ガスの放出・拡散過程,物理状態の探査 ・究明およびガス放出量の連続モニタリングを目的として,光学 観測条件に優れた海外のサイトをベースとした地上からの光学観 測に基づく研究を進めてきた。1997年〜1999年冬季にオーストラ リア中央部で実施した光学観測に引き続き,木星の赤緯が+値に 増加してきた2000年には,12月から2001年1月にかけてハワイの マウイ島ハレアカラ山頂(標高約3000m)において,約3週間に渡る 連続観測を実施した。ハワイでは,1999年の観測同様に,広視野 2次元撮像カメラ(FOV〜7度〜1000木星半径)を用いて木星(イオ)を 離れ広域に分布するナトリウム・クラウドの観測を実施した。
 1999年の広視野連続観測では,木星近傍から磁気圏,更に惑星 間空間へ放出されていく中性ナトリウムガスの空間分布とその時 間変動を確認した(2000年合同大会 Pe-P005)。しかし,この観測 では,ナトリウム発光の抽出に用いた干渉フィルター部に温度制 御機構が備わっていなかったために,温度変化に伴いフィルター の中心波長が変化することにより生じる見掛けの発光強度変化の 影響があり,発光量の定量化や発光分布の変化から導出されるガ スの伝搬速度の精度に難点があった。そこで2000〜2001年の観測 では,新たに干渉フィルターの温度制御機構(温度保持精度1度) を付加することにより気温変化による見掛けの発光強度変化の影 響がほぼ無くなり,確度の高いデータの取得が可能となった。
 ハワイでの約3週間に渡る連続観測では,1晩を除きほぼ毎晩デ ータ取得に成功した。観測では,光検出器として電子冷却型CCD カメラを用い,ナトリウムD線(589.0,589.6nm)のイメージと木星 のディスク散乱光等を差し引くための背景光(620.0nm)のイメー ジを,30分間(typical)の露出時間で交互に撮像した。データに は,イオ起源のナトリウムガス発光成分の他に超高層でのナトリ ウム夜天光の成分が含まれ,更に地球大気による吸光の影響も生 じている。何れも時間変動を伴うものであり,現在は,これらの 影響を評価し分別しつつ解析を進めている。
 講演では,ハワイでの観測の概要,結果とともに,観測結果か ら予測されるイオ起源ガスの放出機構についても言及する予定で ある。