地球放射線帯電子の太陽活動周期での
時間・空間変動
- TIROS/NOAAによる観測 -

*三好 由純[1], 森岡 昭[1], 小原 隆博[2], 三澤 浩昭[1]

東北大・理・惑星プラズマ・大気研究センター[1]
通信総合研究所[2]

Temporal and Spatial Variation of Electron Radiation Belts during the Solar Cycle
-TIROS/NOAA Observations -

*Yoshizumi Miyoshi[1] ,Akira Morioka [1],Takahiro Obara [2]
Hiroaki Misawa [1]
Planetary Plasma and Atmospheric Research Center, Tohoku University[1]
Communications Research Laboratory[2]

We have analyzed the long term variation of energetic electron flux to derive characteristic time scales in the radiation belts, using the huge data sets of the TIROS/NOAA satellites during the period from 1979 to 1999. As the result, the existence of the flux variation synchronized with the solar cycle in both the inner ant outer radiation belts was confirmed. During the solar active phase, the relativistic electron flux in the inner portion of the outer belt increased, while the flux in the outer portion decreased. This L-dependent phase difference of electron flux is due to the change of the flux peak location of the outer radiation belt.

[はじめに]
地球放射線帯は、1950年代末にその存在が同定されて以来、多くの知見が得られている。しかし、粒子フラックスの時間変動に関して、磁気嵐時においての詳細な観測・解析例はあるものの、長期時間変動については、静止軌道以外の領域において連続したデータが不足していること等の理由により、未解明の点が多い。 現在、放射線帯の、特に外帯の研究は、個々の磁気嵐主相時に外帯が消失し、回復相で再出現することを明らかにするとともに、何らかの機構によって、磁気嵐ごとに相対論的電子が生成されている可能性を示唆している。 放射線帯相対論的電子の長期時間変動は、磁気嵐時に相対論的電子を生成する機構の長期的な時間・空間変動を反映するものと考えられ、その具体的なメカニズムを明かにする上で重要な手がかりを持つことが期待される。
そこで、本研究グループでは、極軌道衛星TIROS/NOAA衛星の1979年から1999年にわたる連続したデータを用い、hot electronならびに相対論的電子の変動に関して、その時間スケールならびに空間変動に注目した解析を行った。
[解析]
解析の結果、太陽活動周期に対応すると考えられる長周期(11年)の変動が見いだされるとともに、すでにSAMPEX衛星によって報告されている地磁気の活動に対応する13日、27日、半年、及び1年の周期変動の存在を確認した。 いずれの周期変動も、通常の磁気嵐において粒子フラックスの変動が激しい外帯領域に加え、内帯・スロットにおいても確認された。これらの周期変動は、hot electron及びL < 4の領域の相対論的電子については、太陽活動度が高いほどフラックスが増大するのに対し、L > 5の相対論的電子は、太陽活動度が低いほどむしろフラックスが増大することが明かになった。
一方、空間変動に注目した解析の結果、外帯相対論的電子は、そのフラックスの中心位置を太陽活動とともに変化させ、太陽活動が高いほどより地球に近い方に、逆に太陽活動が低いときは外側にシフトし、上記のフラックスの時間変化の領域依存性は、外帯のグローバルな空間変化に対応することが見いだされた。 さらに、この中心位置は、経験式によって導出されるプラズマポーズの位置の長期変化によく対応し、これら相対論的電子の長期変動の一因として、プラズマ圏あるいはconvection電場の変動が関与している可能性を示唆している。
また、太陽風及び地磁気活動との相関解析を行ったところ、太陽風速度についてはhot electron、相対論的電子ともに外帯全域で相関が高いのに対し、IMF Bz、太陽風電場、あるいはDstと外帯相対論的電子との相関関係は、外帯内側が高いのに対し外側では低く、太陽風・地磁気の長期変動に対する外帯の応答に領域・エネルギー依存性があることが判明した。
これらの変動のうち、太陽活動、太陽風に対する応答における領域間の変動の時間差は、外部磁気圏にソースがある場合のradial diffusionから予想される時間差よりも短く、いわゆる古典的な拡散時間よりも速い輸送、あるいは放射線帯内部に相対論的電子のソースがある可能性が示唆される。