マルチスケール計算機実験による
異常抵抗発生の計算機実験
*村田 健史[1], 大村 善治[2], 松本 紘[2]
愛媛大学工学部[1]
京都大学宙空電波科学研究センター[2]
A study of anomalous resistivity
in the magnetotail plasma sheet
*Takeshi Murata[1]
,Yoshiharu Omura [2]
Hiroshi Matsumoto [2]
Ehime University[1]
RASC, Kyoto University[2]
Two simulation codes are combined to study two step pseud-self-
consistent simulations via hybrid code and KEMPO code. On the
first step, the hybrid code reproduced plasma sheet compression
due to additional magnetic pressures given to the lobe boundary.
The electron (fluid) is thermalized more than 50 times on N.S.,
while ions are almost not. Cross-tail current increases and relative
drift velocity exceeds the acoustic wave velocity. They lead
to an unstable condition for ion acoustic wave. On the second
step, we perform full particle simulations by KEMPO. We use,
as an initial condition, hybrid code results. Effective resistivity
is estimated from decrease of current.
磁気リコネクションは磁気圏尾部ダイナミクスの鍵となる現象であると考
えられている。磁気圏尾部のプラズマシートで発生するリコネクション現
象は、これまで、異常抵抗を仮定して、研究が行われてきた。この抵抗が
どのようなメカニズムによって発生し、また、リコネクションによって形
成されるプラズマシートの物理量の配位が、その抵抗の成長をどのように
増幅(または減衰)させるかを、理解する必要がある。 リコネクション
現象を研究する手法として、大きな領域の計算を行えることから、これま
でMHDシミュレーションが多く用いられてきた。一方、近年、スーパーコ
ンピュータの発展に伴い、粒子シミュレーションが盛んになりつつある。
粒子シミュレーションは、プラズマの運動論的効果を解析できるため、
MHDコードに比べて、よりミクロスケールで、現実に近い現象の解析が可
能である。
本研究では、まず磁気中性点において、異常抵抗となり得るプラズマ波動
不安定成長が存在するかについて、1Dおよび2Dハイブリッドコードにより
調べた。プラズマシートをはさむローブ領域に付加的に圧力を加えること
により、プラズマシートの圧縮状態を発生させる。圧縮は、GEOTAIL衛星
による観測を参照し、様々な時間スケール/空間構造による圧縮を行っ
た。その結果、次に、プラズマシートが強く圧縮される時刻で、磁気中性
点近傍に、電子電子のCross-Tail方向への加速、および加熱が確認され
た。このとき、イオンは、ドリフト速度、温度ともに、初期状態からの変
化は、ほとんどなかった。図は、1D計算における、プラズマシートの厚さ
D(t)/D(0)(x軸)と、ローブに加えた磁場強度Bx(t)/Bx(0)を示したもので
ある。網掛している時間帯は、電子加熱が十分に起こり、また、相対ドリ
フト速度が音速を超える時間帯を示す。すなわち、イオン音波不安定条件
が満たされている時間帯である。
次に、磁気中性点近傍を切り出し、この状態を初期状態として、2次元の
フル粒子コード(KEMPOコード)による計算機実験を行った。このとき、
初期パラメータは、ハイブリッドコードで得られた磁気中性点のパラメー
タを用いた。ただし、電子に関しては、流体パラメータを粒子パラメータ
に置き換える必要があるため、Shifted-Maxwell分布を仮定した。この結
果、不安定性理論で予測されるイオン音波の発生を確認した。また、それ
にともない、電子の速度分布関数の崩れと、弱い加熱が発生した。その結
果、電子ドリフト速度は減少し、数%程度のCross-Tail方向の電流減少が
確認された。なお、イオンは、熱速度、ドリフト速度ともに、ほとんど変
化しなかった。
この結果は、プラズマシート圧縮が発生する際には、磁気中性点近傍にお
いて、波動粒子相互作用による異常抵抗の発生がありえるということを示
唆している。本研究では、次に、電流の減少をマクロなパラメータとして
ハイブリッドコードに戻し、ハイブリッドコード計算を進める。これによ
り、マクロ(メソ)スケールとミクロスケールの計算を、完全ではない
が、準自己無撞着な方法で、計算することができる。この、ミクロスケー
ルからマクロ(メソ)スケールへのフィードバックについては、現在、手
法を確立し、計算機実験を計画中である。講演では、準自己無撞計算結果
手法やその結果についても、報告する予定である。