地磁気擾乱に伴う
全球電離圏・熱圏の応答のモデリング

*丸山 奈緒美[1], 渡部 重十[1]
Timothy J. Fuller-Rowell[2]

北海道大学 理学研究科 地球惑星科学専攻[1]
NOAA Space Environment Center, Boulder.[2]

Modelling of the response of
the global Ionosphere-Thermosphere to geomagnetic storms

*Naomi Maruyama[1] ,Shigeto Watanabe [1]
Timothy J. Fuller-Rowell [2]
Graduate School of Science, Hokkaido University[1]
NOAA Space Environment Center, Boulder.[2]

A new coupled-Ionosphere-Thermosphere model has been used to understand the complex interaction between ionized and neutral species of the Earth’s upper atmosphere. Under the geomagnetically quiet conditions, it was demonstrated that the model could reproduce the general feature of the low-latitude ionosphere-thermosphere system. On the other hand, the response of the ionosphere and thermosphere to geomagnetic storms was studied with using the model. The results showed the generation, propagation, and dissipation of the large scale AGWs due to the auroral power input at high-latitudes. At low- latitudes, imposed electric field disturbances dramatically changed the ionospheric structure.

電離圏・熱圏結合モデルが新たに開発され, 電離・中性大気の複雑な 相互作用を理解するために用いられた. 地磁気活動が静穏な条件において, DE-2 衛星データと比較して良い一致 が得られたことにより, モデルは低緯度における電離圏・熱圏の一般的な 描像を再現することができるということが示された. また中性大気の 全球的な日変動を決定する上で, イオン抗力が重要な役割を担っている ということが示された. 一方で地磁気活動に対する全球の電離圏・熱圏の応答がこのモデルを 用いて調べられた. 高緯度に流入されたエネルギーにより, 大規模大気 重力波の励起・伝播・散逸する様子が再現された. このエネルギーは, 地磁気活動に伴うオーロラ降下粒子の増加と磁気圏対流電場の増大を 記述する経験的モデル [Fuller-Rowell and Evans, 1987; Foster et al., 1986] により再現されている. 大気重力波の励起・伝播は 経度・地方時依存性を示し, 主要な加熱源付近, すなわち夜側でより頻繁 に励起され, また同様に夜側をより好んで伝播する様子が見られた. また大気重力波は発生後約3.5時間で地理赤道へ到達し, 反対半球から 来た波と相互作用した後, 次第に散逸していく様子も見られた. さらに 低緯度擾乱電場モデル [Fejer and Scherliess, 1997; Scherliess and Fejer, 1997] を加えて低緯度電離圏の変動を調べた.電場擾乱の 成因に関して, 磁気圏電場の侵入と擾乱ダイナモ電場の両過程が考慮 され, AE 指数の履歴と地方時の関数で示されたモデルである. 擾乱電場 に伴う低緯度電離大気変動は地方時・緯度・経度に依存して様々な応答 を見せた. 変動量の比較により, 大気重力波に伴う電離大気変動に比較 して擾乱電場に伴うそれの方が大きい, また擾乱電場の中では, 磁気圏 電場の侵入に比べて擾乱ダイナモ電場過程に伴う電離大気変動の方が 大きいことが示された.