中国南部における古生代の
磁気層序学的研究

*成本 和俊[1], 楊 振宇[2], 乙藤 洋一郎[3]

神戸大学大学院自然科学研究科[1]
地質力学研究所[2]
神戸大学理学部[3]

Late Paleozoic magnetostratigraphic study from south China

*Kazutoshi Narumoto[1] ,Zhenyu Yang [2]
Yo-ichiro Otofuji [3]
Graduate School of Science and Technology, Kobe University[1]
Institute of Geomechanics, Chinese Academy of Geological Science[2]
Department of Earth and Planetary Sciences, Faculty of Science, Kobe University[3]

We collected 575 oriented samples from Carboniferous and Permian stratigraphic sequence in Guizhou province, China. These samples were located at either side of anticline or syncline. Remanence of each specimen was measured using a 2G SQUID magnetometer which is housed in a magnetically shielded room at Kyoto University.
After thermal treatment, two magnetic components were isolated from 80% of 151 specimens measured up to now. Remanent magnetizations having low-unblocking temperature (LTC) are almost equal to the geocentric dipole field direction, and the other having high- unblocking temperature (HTC) decay towards the origin of Zijderveld diagram. The LTCs are judged to be of recent secondary origin. On the other hand, the HTCs are possibly of primary origin.

 これまで、石炭紀の詳細な磁気層序は、北米大陸から 報告されているのみである(DiVenere and Opdyke, 1990; 1991, Opdyke and DiVenere, 1994など)。本研究では、 古生代の地層が広く分布する中国貴州省を対象地域とした。 なぜならば、これまでの磁気層序学的研究では行われていなかった 褶曲の両翼からの試料採取が可能という利点をもつからである。 磁気層序学的研究において、褶曲の両翼断面の磁気層序の比較は、 それら磁気層序の信頼性(磁化獲得時期など)を考察するために 最も適しており、世界で初めての試みである。
 中国貴州省南部平塘地域では、南-北から南南西-北北東の 褶曲軸をもつデボン系から三畳系の褶曲構造がみられる。 筆者らは石炭系からペルム系を対象とし、この地域にて 褶曲軸を横切るように約40kmの範囲から10sectionにおいて 石灰岩試料を採取した。採取にはエンジンドリルと 磁気コンパスを用い、1sectionあたり9個(層厚5m)から 171個(同約400m)、計575個の定方位試料を得た。 試料の残留磁化は、磁気シールドルーム内に設置された 超伝導磁力計(2G 760Rシステム, 京都大学) を用いて測定された。
 段階熱消磁実験の結果、現在までに測定した151個の試料のうち 約80%の試料から2成分が分離された。残りの15%の試料は 1成分を示し、5%は安定な磁化成分を示さなかった。 2成分を示した試料は、200℃〜360℃を境に低温側と高温側の 特徴的磁化成分に分離できた。低温側の成分は 磁気的に安定なものが多く、一部の試料を除きほぼ北向き偏角で 正の伏角を示した。この低温成分の方向は、 試料採取地点における地心双極子磁場方向に集中することから、 最近獲得された二時磁化と推測される。一方、高温成分は 磁気的に不安定なものが多いが、Zijderveld図上で 原点に向かって減衰した。また、その特徴的方向は sectionごとに異なっていた。 両翼間での特徴的方向を比較できるほど充分な数の結果は 得られていないので、今のところ磁化獲得時期について 明確に解釈できない。しかし、これらの高温成分は、 以下の点において最近の二次磁化とは異なり、 初生磁化を記録している可能性が考えられる。

・Zijderveld図上で低温成分と分離できる。
・最近の二次磁化方向とは異なる方向を示す。
・正逆両帯磁の磁化成分を示す。

 今後は岩石磁気学的実験を行うとともに 充分なデータを得るためにさらに測定し、 高温成分の起源などを議論する予定である。