ポーラカスプ・キャップでの静穏な宇宙電波雑音強度の長期変動
*西野 正徳[1], 中尾 正就[1], 山岸 久雄[2]
Yan Holtet[3]
名古屋大学太陽地球環境研究所[1]
国立極地研究所[2]
オスロ大学[3]
Secular variations of quiet cosmic radio noise at the polar cusp/cap
*Masanori Nishino[1]
,Masanari Nakao [1]
Hisao Yamagishi [2],Yan Holtet [3]
Solar-Terrstrial Environment Laboratory, Nagoya University[1]
National Institute of Polar Research[2]
University of Oslo[3]
Secular variations of quiet values of cosmic radio noise (30
MHz) are reduced from 10-years data by the imaging riometer at
Ny-Aalesund (corrected geomag. lat., 76) in the polar cusp/cap.
Quiet values of 64 beams are usually used as background levels
every month in order to obtain real absorption. The secular variation
of cosmic radio noise at 00h UT for the zenith beam shows a good
correlation with the one of counts by neutron monitor at Kiel.
Neutron monitor represents magnitude of galactic cosmic rays
and shows generally an anti-correlation with the variation of
sunspot number on solar activity. This makes a conclusion that
the secular variation of quiet ionosphere at the polar cusp/cap
is determned by the D-region ionization due to galactic cosmic
rays.
極域電離圏擾乱に起因する銀河電波の電離層吸収増大を2次元的
に測定するイメージングリオメータ(IRIS)の観測を北極圏ス
バールバル・ニーオルスンで始めて以来10年になる。IRIS用
のアンテナは半波長ダイポール(周波数30MHz)の8x8の2次元
アレーで構成され、頭上の電離層に8x8の2次元ビーム(半値幅
11度)が投影される。通常、約10日間の電波強度データの中か
ら静穏日のデータを選択し、IPM(変曲点)法で64ビームの静
穏日曲線(QDC)を導出し、この値と電波強度の差から電離層に
おける電波吸収量(CNA)を求めている。QDCには銀河電波源
の長期間の変動による効果や、11年周期の太陽活動に起因する電
離圏の長期変動や季節(月)変動の効果が考えられるが、CNAの
導出には経験的に、1ヶ月毎のQDCを導出して参照として用いて
いる。しかし、実際にはQDCが長期間でどの程度の変動があるか
はあまり研究されていない。
本研究の目的は、約10年間の観測データから、QDCの変動を
ビーム毎に、また、UT毎に整理し、長期変動を求め、その変動の
原因を探ることである。IRISでは、単一ビームに比べ、アンテ
ナビーム幅が狭いため、強度データからのQDC導出の信頼度は高
く、また、多ビーム方向にわたる変動が求められる利点がある。結
果の1例として、天頂方向に近いN4E4ビームで導出された00hUTに
おけるQDCの10年間の強度変動(相対値、dB)を見ると、夏に
減少し、冬に上昇する変動幅約1dBの季節変動が現れ、この変動
を5次の多項式で近似すると、1996-1997年に最小値(4.2 dB)と
1991年に最大値(5.2 dB)をもつ長期トレンドが現れる。同期間
の太陽活動のSunspot Number(SN)とNeutron Monitor (NM)(
Kiel)の長期変動と比較すると、静穏日電波強度の年変動とSNの
変動はよく似ている。しかし、SNの増大(減少)は電離層を相対
的に厚く(薄く)して銀河電波強度を弱める(強める)という物理
的シナリオには合わない。一方、NMで観測される銀河宇宙線の強度
変動は、SNとは逆相関であり、銀河宇宙線強度の増大(1996-19 97年)が電離層D層を厚くすれば、その結果、銀河電波強度が減少
するシナリオに合う。このことから、極域電離圏で観測される銀河
電波の静穏日長期変動は銀河宇宙線で電離される電離層D層の変動
によって決められると結論される。