高緯度電離圏ポテンシャルとAL indexの経験的モデル
―サブストームにおける盛衰―
*西村 瞳[1], 田口 聡[1]
電気通信大学[1]
Empirical model of the ionospheric potential and the AL index
*Hitomi Nishimura[1]
,Satoshi Taguchi [1]
Univ. of Electro-Communications[1]
An empirical model for substorm development in the high-latitude
potential and the AL index has been constructed. DE 2 potential
data were analyzed, and the data were divided into 7 phases according
to the AL variations. For each phase, relations of the magnitude
or location of the potential extreme points with IMF Bz were
identified. Based on the potential distributions given by these
relations, a potential map was made with spline interpolation.
A flexible conductance model was also constructed modifying three
models in the literature. We calculated AL indices using the
potential model together with this conductance model. We will
show how the results of calculation agree with the actual AL
index, and discuss the cause of possible discrepancy.
我々は、サブストームの発達を表現できる経験的な極域電離圏ポ
テンシャルモデルの構築、さらにはそれを用いたAL indexモデルの
算出を進めている。基礎データは、サブストーム時のDE 2衛星観測
のポテンシャルデータである。ALの盛衰に応じてデータを7つにグ
ループ分けし、それぞれのphaseに対応したポテンシャルモデ
ルを構築してきた。各phase毎に、ポテンシャルの極値の大きさと
位置およびゼロポテンシャルの位置を3時間ごとのローカルタイム
で分け、太陽風磁場Bzとの関係を求めている。これまで、最小二乗
フィットによる関係を用いてきたが、今回はその方法を改良した結
果とモデルAL indexの算出について報告する。
まず、あるBzに対するポテンシャル特性を得るため、その前後
2 nTの範囲のBzの時に得られたデータを使って平均値を求めるこ
とにより、対応するBzとポテンシャル関連の値との関係を導出し
た。その結果、ポテンシャル極値の大きさと緯度のBz依存性が明
確に同定できた。phaseとローカルタイムによって状況は幾分異な
るが、ポテンシャルの極値の大きさについては、28のデータグル
ープの半数以上が相関係数0.8以上を示し、特に、ALのピーク周辺
を表すphaseの18-21時のローカルタイムセクターでは相関係数
0.98を示した。これらの関係を用いて、真夜中後から真夜中前へ
の極大ポテンシャルの侵入としてのハラング不連続の成長や、ポテ
ンシャルピークの高緯度への移動、recovery phaseにかけての真
夜中前から真夜中後への極小ポテンシャルの侵入が明確に再現でき
た。
このポテンシャルモデルに基づき、AL index算出に使われている
12のステーションにおける磁場変動を求め、モデルAL indexを算出
した。そのための電離圏導電率として、新たなモデルを作成した。
このモデルは、太陽放射の影響を表す Moen and Brekke [GRL, pp. 971-974, 1993] のモデルとオーロラ粒子の寄与を表す Hardy et al. [JGR, pp. 12,275-12,294, 1987] のモデル、さらにサブ
ストーム時の平均的なコンダクタンスを表す Gjerloev and Hoffm an [JGR, pp. 215-226, 2000] のモデルをもとにしている。ポテ
ンシャルモデルから算出したコンベクション電場の発散を求め、夜
側における負の最小値にコンダクタンスのピークが合うように調整
している。1999年3月15日のエレクトロジェットイベントを対象に
、ポテンシャル分布とAL indexモデルを求め、観測と比較した。
その結果、
ALピークの大きさは観測と近い値が得られることがわかった。しか
し、ピーク前のphaseでは約25%大きく、またピーク後のphaseでは
約30%小さくモデル値は算出された。適用例を増やし、現在のモデ
ルがサブストームのAL indexをどの程度まで再現可能かについて考
察する。
さらにサブストームオンセット前の成長相のポテンシャルモデル
の構築が可能かどうか検討した。オンセット前45分間に含まれるDE 2衛星データを取り出し、サブストーム時と同様の方法でポテンシ
ャルモデルを作成した。サブストーム時に比べてポテンシャルの極
値の大きさが明らかに小さく、2セルの渦が夜側で接近せず、朝夕
に向かって互いに離れるように位置することがみられた。この詳
細についても合わせて報告する。