地磁気擾乱時にSuperDARNレーダーにより観測された 非常にスペクトル幅の狭い電離圏エコー
*西谷 望[1], 小川 忠彦[1], 佐藤 夏雄[2], 山岸 久雄[2]
行松 彰[2]
名古屋大学太陽地球環境研究所[1]
国立極地研究所[2]
Ionospheric echoes with high velocities and very narrow spectral widths observed by the Syowa SuperDARN radars during high geomagnetic activity
*Nozomu Nishitani[1]
,Tadahiko Ogawa [1],Natsuo Sato [2]
Hisao Yamagishi [2],Akira Sessai Yukimatu [2]
Solar-Terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University[1]
National Institute of Polar Research[2]
We report the presence of ionospheric echoes with high (>
400 m/s) Doppler velocity and very narrow (< 50 m/s) spectral
width, observed by the Syowa East and South SuperDARN radars.
These echoes have the following characteristics. (1) They have
close correlation with geomagnetic activity. (2) Their existence
does not depend on magnetic local time. (3) They are located
preferably in the polar cap region, where anti-sunward convection
prevails. (4) They sometimes exist over a wide range, so they
are more likely to be F-region echoes than E-region ones.
SuperDARNレーダーで取得されるパラメータのうち、スペクトル幅(spectral width)は
一観測ピクセル(通常180 km×45 km)における電場の擾乱成分を示しているとされる。
通常F層電離圏においては、低いときでも50 m/s程度のスペクトル幅を持っており、擾
乱成分が多くなると、場合によっては300 m/s以上の値になる。このパラメータを利用
して、電離層におけるカスプ領域等を特定しようとする試みが近年盛んに行われている。
我々は南極昭和基地におけるSuperDARNレーダーのデータを用い、このスペクトル
幅が地磁気活動とともにどのように変化するかどうかを調べた。その結果、通常より遙
かにスペクトル幅の狭い(< 50 m/s)エコーが地磁気活動時に観測されていることを発見
した。通常スペクトル幅の狭いエコーは地上で反射されて返ってきたground scatterであ
ることが多いが、今の場合にはvelocityが400 m/s以上の値を持っており、電離圏散乱
エコーであることは確実である。
このスペクトル幅の狭いエコーは次のような性質を持つ。(1)地磁気活動指数Dstと密
接な関連を持っており、Dstが大きくなるとこのエコーの発生率は上昇する。(2)エコーの
発生頻度とMLTとの間には明確な関連が認められない。(3)対流方向との比較では、反
太陽方向への対流領域(通常極冠領域に相当する)での発生率が高い。(4)スペクトル幅
の非常に狭いエコーは時として1000 km近くにもわたるレーダーレンジに同時に存在して
おり、E層電離圏エコーではなくF層電離圏エコーである可能性が非常に高い。
ここで注意しなければならないのは、スペクトル幅を大きくする要因は、有限領域におけ
るturbulentな電場成分と、もっと大規模な空間勾配成分から成り立っているということであ
る。スペクトル幅が非常に狭いということは、大規模電場の空間勾配が非常に小さく、かつ
turbulentな電場成分が非常に抑制されているということを意味する。この様なエコーがな
ぜ地磁気擾乱時の極冠域に存在するかについての詳しい議論は、講演で行う予定である。