オゾンゾンデ及びドロップゾンデによる成層圏慣性重力波の観測的研究
*野口 克行[1], 今村 剛[1], 鈴木 勝久[2], 渡辺 隆[3]
村田 功[4], 小山 孝一郎[1]
宇宙科学研究所[1]
横浜国立大学[2]
筑波技術短期大学[3]
東北大学[4]
Ozonesonde and rocketsonde observations of the inertio-gravity waves in the stratosphere
*Katsuyuki Noguchi[1]
,Takeshi Imamura [1]
Katsuhisa Suzuki [2],Takashi Watanabe [3],Isao Murata [4]
Koh-Ichiro Oyama [1]
Institute of Space and Astronautical Science[1]
Yokohama National University[2]
Tsukuba College of Technology[3]
Tohoku University[4]
An analysis was made to reveal the nature of the inertio-gravity
waves in the stratosphere with the aid of ozonesonde and rocketsonde
observations. Power spectral analysis of the wind, temperature
and ozone height profiles concluded that the characteristic vertical
scales were several kilometers. The intrinsic frequency, horizontal
wave number and group velocity vector were obtained under an
assumption that the observed disturbances were due to monochromatic
and plane inertio-gravity waves.
中間圏から熱圏における重力波は、MSTレーダーや大気光イ
メージング、GPS受信機網などにより遠隔観測されている。し
かし、オゾンの光化学生成において重要な上部成層圏(25kmから
60km)では有効な散乱体や発光体が存在しないため、観測手法が
ロケットから放出するドロップゾンデや高高度気球などに限られ
ている。本研究では、オゾンゾンデ及びドロップゾンデによる観
測データを用いて、成層圏における慣性重力波の伝播特性を調べ
た。成層圏から地表までの東西及び南北風速、温度、オゾン数密度
が鉛直分解能100-200mで同時に測定された。
どのくらいの鉛直波長の重力波が卓越し飽和しているかを知る
ため、風速の鉛直波数スペクトルを求め、飽和重力波の理論スペ
クトルと比較した。鉛直波長が数kmオーダーの領域では、観測
されたスペクトルは理論スペクトルとおおよそ一致した。スペク
トルに現れた卓越鉛直波長成分を取り出すため、風速の高度分布
にバンドパスフィルタ処理を行った後、重力波の風速振動の回転
(ホドグラフ)と重力波の分散関係を利用して、重力波の伝播特
性を推定した。ホドグラフを見ると、低高度から高高度に向って
時計回りの回転をしていた。これは、波束が低高度から高高度へ
向かって伝播している事を示す。風速変動と温度変動の位相関係
を利用して、観測された重力波の固有振動数、水平波数、群速度
を求めた。
今回解析を行ったオゾンゾンデのデータのほかに、気象用ラジ
オゾンデによる観測が同時期に行われている。今後は、これらデ
ータを合わせて解析することにより、重力波伝播特性の高度によ
る違いや、重力波の擾乱がオゾンに与える影響を明らかにしてい
きたい。