2つEISCATレーダーを用いた下部熱圏風の研究
*野澤 悟徳[1], 前田 佐和子[2], Asgeir Brekke[3]
名古屋大学太陽地球環境研究所[1]
京都女子大学 現代社会学部[2]
Faculty of Science, University of Tromsoe[3]
Research on the lower thermospheric wind dynamics by using two EISCAT radars
*Satonori Nozawa[1]
,Sawako Maeda [2],Asgeir Brekke [3]
STEL, Nagoya University[1]
Kyoto Womenユs University[2]
Faculty of Science, University of Tromsoe[3]
EISCAT Svalbard radar (ESR) has been able to observe E-region
ionospheric parameters reliably since August 1998. EISCAT often
organizes simultaneous observations with two EISCAT radars at
Longyearbyen (78 deg. N) and Tromsoe (69 deg. N) during CP times.
These observations give us a good opportunity to examine differences
of the lower thermospheric winds in the polar region.
スヴァールバルEISCATレーダー(ESR)は1998年8月E層の観測が
可能になり、ほぼ3年が経過した。EISCATにおいては、共通プログラム(CP)を実施するときに、メインランドレーダー(EISCAT UHFレーダー
とVHFレーダー)の1つとESRを同種の観測モードで同時観測をしば
しば実施している。今回はこの同時観測により得られた下部熱圏風
のデータを用いて、中性風の緯度による違いについて報告すると
ともに、極域における風系について議論する。
すでに多くの機会を用いて述べているが、EISCATレーダーに
おいては、3局方式(観測モードCP2)と沿磁力線方式(観測モード
CP1)により下部熱圏風の導出が可能である(e.g., Nozawa and Brekke, Radio Sci., 35, 845-863, 2000)。なお2000年のほぼ1年
間、EISCAT UHFレーダーはシステム改良のため、観測不能であった。
2001年2月から稼動が再開されている。ESRのあるロングイアビン
(78.2 deg. N)とEISCAT UHFレーダーがあるトロムソ(69.6 deg. N) は緯度にして約9度離れている。トロムソは、通常夜間はオーロラ帯
に、昼間はサブオーロラ帯に位置する。一方で、ロングイアビンは
ポーラーキャップ内であるが、午前の朝付近には、カスプ領域
(またはその近傍)に位置している。このような地磁気的な位置の
違いによって、対流電場による違いや、太陽光以外の熱源(ジュール
加熱等)が大きく異なることなることが考えられる。下部熱圏に
おける大気運動が北緯70度から80度に渡ってどのような風系になって
いるかを調べることは興味深いが、これまでなされていない。そこで
今回5ケース以上の同時観測データを用いて、風系を調べた。
一方で、地理緯度78度の高緯度に位置するISレーダーは他に
存在せず、この高緯度における下部熱圏における大気潮汐波の
研究はほとんどなされていない。さらに、プラネタリー波に関して
はほぼ皆無であると言える。2001年2月5日から26日の21日間、ESR において継続的に観測が行われた。そこでこのデータセットを用いて、プラネタリー波(特に2日波)の変動を調べるとともに、
大気潮汐波の日変動について併せ調べた。
講演では下部熱圏の風系の緯度変動を議論するとともに、
ロングイアビンにおける長周期波動の変動について報告する予定
である。