アンドロメダ星雲中心より到来するデカメータ電波パルス群の解明
*大家 寛[1], 飯島 雅英[2]
福井工業大学[1]
東北大学[2]
Investigation of Source Positions of Decameter Radio Wave Pulses from the Center Part of Andromeda Nebula
*Hiroshi Oya[1]
,Masahide Iizima [2]
Fukui University of Technology [1]
Tohoku University[2]
An interferometer system, of the decameter radio waves, which
consists of four decameter radio observation stations of Tohoku
University at Yoneyama, Kawatabi, Zao and Iitate located with
base lines within a length range from 45km to 115km being linked
by radio waves of telemeter system has been established for the
detection of weak decameter radio wave pulses from the center
part of Andromeda Nebula. For this purpose, four cesium vapor
time standards have been furnished being distributed at each
component observation station of the interferometer system.
Calibration of the relative phase shift of the instruments at
all of the component stations has been made utilizing decameter
radio waves from Cassiopeia A. Observations have been started
from early September, in 2001.
1.序 本研究に先行して、銀河中心部に1″角精度で24種に到る
デカメータ電波パルス群が存在することが確認されていた(Oya and Iizima, 1999, Science Report of Tohoku University, Ser. 5, Vol. 35, No.2, P1-78)が、この成果を踏まえ、同種の74種に到る
デカメータ電波パルス群に対する電波源がアンドロメダ星雲にも存在す
ることを確認している(第108回地球電磁気・地球惑星圏学会講演会
,2000)。しかし、この電波源が真にアンドロメダ星雲中心部に存
在するか否かの確定の必要があり、2000年4月より本研究が開始さ
れた。
2.長距離干渉計実時間計測法の開発 本研究では、“アンドロメダ
星雲の中心位置にあるデカメートル電波源位置を1″角以内の精度で確
定できること”を主題として、すでに木星デカメートル電波観測のため
に東北大学理学部で開発されている45km〜115kmの範囲のベー
スラインをもつ長距離干渉計網を応用し、アンドロメダ星雲中心に対す
る電波源位置決定のための“干渉計による実時間計測法”を開発した。
なお、このシステムには2001年4月より干渉計の基礎局すべてにお
いてセシウム時間標準が設置され、テレメーター電波の位相制御も
10^-13の精度で実施可能となり、実時間計測法の考え方を実現可能
としている。
2.1 S/NとA―D変換問題 電波天文学においては非コヒーレ
ント性の電波受信信号のA−D変換の際、対象信号のS/Nが1より極
端に小さな場合に、信号レベルが単独ではA―D変換器の最小検出ビッ
トに達しなくとも、長時間積分法を用いることによって、信号検出可能
となることは良く知られている。A−D変換器の基準電圧T_AD に対し
、信号電圧S、雑音電圧Nを考える時、S+NがT_ADを越す確率
P(S+N−T_AD >0)とNがT_ADを越す確率
P(N−T_AD >0)は、統計的に明らかに
P(S+N−T_AD >0)>P(N−T_AD >0)
であるからである。しかし、この考えをパルス成分を解析する対象に適
用することは出来ない。すなわち、周期解析に際しては、ディジタル空
間でのSの存在がランダムな要素をもつNに支配されてはならないから
である。そこで以下の評価を行った結果、実時間干渉計法を開発する必
要のある点が結論された。
・銀河中心からのデカメータパルス群の平均S/N比:8×10^-3。
・銀河中心からのデカメータパルス群電波レベルのA―D変換後の最大
占有ディジット:下位5ビット(銀河背景雑音レベルを最大ビット
12に調整した時)。
・銀河中心からのデカメータパルス群の電波レベル平均値:7000Jy。
・予想されるアンドロメダ・デカメータ電波パルスの強度:
銀河中心デカメータ電波パルス強度に対しー38dB。
したがって、A−D変換時、最下位2ビットに対応するアナログレベル
として受信するためには、アンテナシステム指向性ビーム・クロスセク
ションを銀河中心デカメータ電波観測の場合の1/735に、すなわち
等価アンテナ利得を28dBあげる必要がある。また同時に1″角の精
度の指向性を得るため、アナログレジームで干渉計を動作させることか
ら実時間運用が不可欠となる。
2.2 方式 本実時間計測法では、基準局で得られた信号と任意の
対局での位相を完全にそろえ加算して、最大信号強度をうる方式をとる
。したがって、中央受信局では開発された対局から送られてくる信号の
位相差制御装置を設置し、基準局と対局との間での干渉位相差を0.5
秒毎に制御しつつ相殺している。この際、対局に生じている受信システ
ム位相差はセシウム時間標準の安定限界となる2週間の間に1回ずつ較
正してゆく必要がある。
2.3 機器位相差の較正 各観測点間の絶対位相をそろえるために
必要な各観測局での受信システム位相差の較正は、カシオペアA電波源
からのデカメータ電波を用い20時間にわたる時間積分を行って、干渉
計位相差の変動に対しカシオペアA電波源内に特定し、算出された規準
フリンジ位相変動との間での相関値によって行った。
3.観測 準備観測に2001年8月中旬より入り、各局の受信機シ
ステムのレベル位相安定性、テレメーターシステムの位相伝送特性を計
測した。その結果、位相安定性は2週間にわたり±45°の範囲にあり
、所期の目的を果たしている。9月上旬より各局の位相較正を実施し、
9月7日より本観測に入った。精度±15°でシステム位相差が決定さ
れている。