地球磁気圏遠尾部プラズマシート、ローブ境界の詳細構造

*齋藤 義文[1], 向井 利典[1], 寺沢 敏夫[2], 町田 忍[3]

宇宙科学研究所[1]
東京大学[2]
京都大学[3]

Detailed structure of the plasmasheet-lobe boundaries in the Earth's distant magnetotail

*Yoshifumi Saito[1] ,Toshifumi Mukai [1],Toshio Terasawa [2]
Shinobu Machida [3]
Institute of Space and Astronautical Science[1]
University of Tokyo[2]
Kyoto University[3]

The existence of the slow-shock plasmasheet-lobe boundaries bounding the magnetic reconnection region in the Earth's magnetotail has already been proved by the GEOTAIL observations. However, the question that how far from the reconnection region slow-shock boundaries can exist has not yet been resolved. The distance between the observed plasmasheet-lobe boundary and the reconnection region can be estimated using the velocity dispersion of the PSBL ion beams, the satellite velocity with respect to the boundary, and the plasma convection velocity. The applicability of this method is proved in the near Earth magnetotail region by the good correspondence between the distance estimated by this method and another method that uses counter streaming PSBL ion beams. We will apply this method to the slow-shock boundaries identified in the distant magnetotail in order to estimate the distance from the reconnection region that slow-shock boundary can exist.

地球磁気圏遠尾部における磁気リコネクションに伴い、磁気リコネ クション領域を囲むプラズマシート・ローブの境界にスローショッ クが存在していることはこれまでのGeotail 衛星による観測から も明らかである。しかしながら、スローショックが磁気リコネクシ ョンの領域からどの程度の領域に広がって存在しており、磁気リコ ネクション領域からの距離でどのように変化していくのかという 点についてはまだよくわかっていない。この問題に答えるための一 つの方法は、統計的にデータを集めてスローショック分布を求める ことであり、この結果については既に本学会にて報告した（齋藤 他：SGEPSS SPRING MEETING, 1999）。しかしながら、磁気圏 尾部におけるプラズマの加速・加熱とそれにスローショックがどの 程度寄与しているのかを定量的に理解するためには個々のプラズ マシート・ローブ境界についてその特性を理解することが重要であ る。個々の例について単独の衛星から得られるデータのみでこの問 題を解決することは困難ではあるが、次のような方法を用いること にした。Geotail衛星の磁気圏近尾部におけるプラズマシート・ロ ーブのデータを調べると、Geotail衛星よりtail側で加速・加熱さ れたイオンビームと、そのイオンビームが地球付近で磁気ミラー反 射されて地球側から戻ってきた成分の両方が観測される。これら互 いに逆方向に流れるイオンビームの衛星への到達時間差を用いる と、衛星から磁気リコネクション領域までの距離を推定することが できる。一方、tail側から衛星に到達するイオンビームのみから磁 気リコネクション領域までの距離を推定することも、イオンビーム のモデルを仮定してプラズマシート・ローブ境界に対する衛星の速 度と、プラズマのconvection速度を用いると可能である。これら の速度は、プラズマシート・ローブ境界がスローショックであるか どうかを判定するために必要な量であるが、これら２つの方法を磁 気圏近尾部で試したところ両者の方法で推定したリコネクション 領域までの距離はよく一致した。そこで今度は、リコネクション領 域の衛星に対する位置に応じてtail方向のみあるいは地球方向のみ に向かうプラズマシート・ローブ境界のイオンビームを用いる、後 者の方法を磁気圏遠尾部でこれまでに同定されている約３０例の スローショック境界に適用してリコネクション領域までの距離を 推定することにした。未だ距離依存については解析途中であるが、 プラズマシート・ローブ境界を詳細に調べた結果、磁気圏遠尾部の プラズマシート・ローブ境界は衛星に対して複雑に運動し、磁気リ コネクション領域から衛星までの間でプラズマシートの温度が変 化していると考えられる例のあることが明らかとなった。