海底電磁場長期モニタリングシステムの開発(その1)

*佐柳 敬造[1], 長尾 年恭[2], 山口 透[1], 岩崎 弘[1]
渡部 勲[3], 藤縄 幸雄[3], 岩崎 伸一[3], 大西 信人[4]
一北 岳夫[4], 高村 直也[4]

理化学研究所[1]
東海大学[2]
防災科学技術研究所[3]
有限会社 テラテクニカ[4]

Development of a long-term monitoring system of electric and magnetic fields at the seafloor, I

*Keizo Sayanagi[1] ,Toshiyasu Nagao [2]
Tohru Ikurumi Yamaguchi [1],Hiroshi Iwasaki [1]
Isao Watabe [3],Yukio Fujinawa [3],Sin-Iti Iwasaki [3]
Nobuhito Onishi [4],Ichikita Takeo [4],Naoya Takamura [4]
RIKEN[1]
Tokai University[2]
National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention[3]
Tierra Tecnica[4]

We started to develop a long-term monitoring system of electric and magnetic fields at the seafloor, which is connected to a submarine cable, in order to clarify changes of resistivity with time, changes in fluid flow in the crust and crustal deformation processes at subduction zones. An ocean bottom electromagnetometer (OBEM) has already made on a trial basis. The OBEM measures horizontal component of electric field and three components of magnetic field with sampling rates of 1, 2, 4 and 8 Hz. These sampling rates are much higher than those of existing OBEMs (usually 30 seconds or 1 minute). It will be tested off the coast of Hiratsuka for several months from October, 2001. Here we will present the outline of the OBEM and preliminary results of the test.

 海底における電磁場観測には,大きく2つの手法がある.ひとつ は自己浮上型の観測装置を用いた方法で,もうひとつは海底ケーブ ルを利用した方法である.前者の長所は,調査海域を自由に選択で きること,複数の観測装置を使って面的な構造探査も行えることで ある.一方,短所は,観測期間が電池の容量に制限されること,リ アルタイムのデータ取得ができない(あるいは困難である)こと, 観測装置の回収(したがってデータ回収)に失敗する危険があるこ とである.後者は,調査海域やオペレーションが海底ケーブルの施 設ルートや仕様によって規定されてしまうが,自己浮上型の観測装 置の苦手とする,長期観測,リアルタイムのデータ取得,半グロー バルな広域観測に威力を発揮する.こうした点に着目して,最近, 海底ケーブルを利用した電磁場観測システムの開発が盛んになって きた.例えば,気象庁による海底ケーブル地電位差観測(御前崎お よび房総沖),Geo-TOC,海半球プロジェクトの海底ケーブル地電 位差観測(二宮−グアム間,グアム−ハワイ間など),VENUS計画 における海底電磁場観測(沖縄−グアム間)などである.
 海底ケーブルによる海底電磁場観測には,供給電力のモニタリン グや陸上局間のアース間電位の測定による地電位差観測と海底ケー ブルに接続した電位差計・磁力計による電磁場観測がある.このう ち前者は陸上の観測装置のみ必要なので比較的容易に行うことがで きる.一方,後者は海底の観測装置が必要で技術的にも経費の面で も前者と比べてかなり難しい.そのため,本格的な定常観測には至 っていない(VENUS計画の観測は現在中断されている).しかし, 沈み込み帯における海底下の比抵抗構造の時間変化や地殻内流体の 挙動,さらには地殻変動の解明には,長期電磁場観測点の海洋域へ の展開が是非とも必要である.
 このような観点から,我々は海底ケーブル接続型の海底電磁場観 測システムの開発に着手した.これまでにシステムの根幹をなす電 位磁力計の試作機を製作し,本年10月より防災科学技術研究所平塚 実験場の観測塔において浅海試験観測を行う予定である.試作機の 主な仕様は以下のとおりである.1)電場:成分数(水平2成分), 測定範囲(+-20 mV),分解能(6.10352E-4 mV/LSB).電極(銀− 塩化銀).2)磁場:成分数(3成分),測定範囲(+327.67〜 -327.98 nT),分解能(0.01 nT),センサー(フラックスゲート ).3)データ記録:測定間隔(1,2,4,8 Hz),記録媒体(陸上 のPCハードディスクおよび海底観測装置内蔵のATA型フラッシュメ モリーカード).4)電源:DC12〜16V.5)耐圧容器:耐圧(4000 m),材質(アルミニウム).基本的な仕様は,既存の海底電位磁 力計と変わらない.しかし,これまで最大1 Hz(通常30秒あるいは 1分)だった測定間隔を8 Hzまで上げている.これにより,細かい 変動についても議論できるようになると考えている.本講演では, 観測装置の概要と試験結果について報告する.