次期地球磁気圏探査への提案1: 多成分プラズマ中スケール間カップリング と太陽−地球相互作用系ダイナミクス

*関 華奈子[1], 長谷川 洋[2], 中林 潤哉[2]
笠羽 康正[2], 塩川 和夫[3], 藤本 正樹[4], 平原 聖文[5]
淺村 和史[2], 松岡 彩子[2], 野和田 基晴[2], 長妻 努[6]
他将来構想検討会有志一同

東京大学[1]
宇宙科学研究所[2]
太陽地球環境研究所[3]
東京工業大学[4]
立教大学[5]
通信総合研究所[6]

Future Magnetospheric Mission 1: InterScale Couplings in Multi- Composition Plasma and Their Effects on Magnetospheric Dynamics

*Kanako Seki[1] ,Hiroshi Hasegawa [2],Jun-ya Nakabayashi [2]
Yasumasa Kasaba [2],Kazuo Shiokawa [3],Masaki Fujimoto [4]
Masafumi Hirahara [5],Kazushi Asamura [2]
Ayako Matsuoka [2],Motoharu Nowada [2]
Tsutomu Nagatsuma [6]
other members of Discussion for Future Meeting
University of Tokyo[1]
Institute of Space and Astronautical Science[2]
Solar-Terrestrial Environment Laboratory[3]
Tokyo Institute of Technology[4]
Rikkyo University[5]
Communications Research Laboratory[6]

In order to understand the complex interaction between the solar wind and Earth's magnetosphere, it is essential to understand dynamics of multi-component plasma in key regions where inter-scale couplings between electrons and ions or ions and MHD are taking place. How can we investigate contribution of microscopic processes occurring in the plasma sheet, magnetopause, or bow shock to the macroscopic topology change and energy release? In this presentation, we would like to stimulate discussion on the scientific target of the future geomagnetospheric mission and necessary spacecraft specifications.

 地球前面定在衝撃波から磁気圏尾部に至るまで、太陽風−地球相 互作用系におけるエネルギー解放機構・物質循環を理解するには、 マクロとミクロの両方のスケールが入り混じる領域、相互作用する 領域でのプラズマダイナミクスを理解することが不可欠である。磁 気圏サブストーム時の磁気再結合は磁気圏尾部〜20-30Reにおいて 開始されることが統計的には示されたが、何がこの磁気再結合の起 る場所とタイミングを決めているのかは明らかにされていない。特 に、磁気再結合現象がサブストームを引きおこしているのか、サブ ストームの駆動源は内部磁気圏の現象で磁気再結合現象は結果であ るのかは、長年にわたり磁気圏物理学上の懸案である。無衝突プラ ズマ中において、プラズマ波動は運動論的なエネルギー授受の媒体 であり、エネルギーの移動先でもある。たとえ空間スケールが小さ くとも、粒子−波動相互作用を理解することは磁気圏研究に本質的 であり、波動でリンクされる電子・イオン結合現象と、それがマク ロな構造変化およびエネルギー変換に果たす役割を明らかにする必 要がある。磁気圏プラズマは、太陽風起源と地球大気起源のプラズ マの双方により構成される。近年、この2つの寄与が太陽風の状態 によりかなり変化することがわかりつつあるが、その変化が磁気圏 ダイナミクスにどのくらい影響を及すのかは不明である。特に、観 測から示されたIMF北向き時のプラズマシートへの多量の太陽風起 源プラズマ流入は、磁気圏境界層のどこかでプラズマ異常輸送が起 きている可能性を示唆しており、それがおこる時間・空間スケール を解明するためには、境界層を詳しく観測し、K-H不安定など関連 が予測される物理機構を理解する必要がある。
 このように、磁気再結合、K-H不安定性、波動粒子相互作用など の物理的素過程の理解が不可欠であることは、太陽風−地球相互作 用系の研究が、宇宙プラズマに普遍的な物理過程の理解にも役立つ ことを意味している。多成分プラズマ中のスケール間カップリング、 無衝突プラズマにおける物質混合、エネルギー解放過程と物質循環。 これらの解明のために、観測手法の面では、複数衛星による時間・ 空間構造の分離、波動と高時間分解粒子観測との結合、プラズマ圏 からリングカレントまでの広いエネルギー範囲における粒子種毎の 3次元分布関数の取得、撮像や能動実験観測の活用など、新しい技 術の導入も必要となる。若手有志でつくる将来構想検討会では、こ れまで6回にわたり、太陽−地球相互作用系研究に重要と思われる 科学命題について意見を出し合い、互いに内容の不備も指摘し合い ながら、10年後、我々はどのような科学の解明を目指していたい か、そのためには必要な地球磁気圏探査は何なのかについて、率直 に議論を行ってきた。月1回という限られた時間の中、海外の新し い計画にも不確定要素があり、何が最適かについて充分に議論が尽 くされたとはまだ言えないが、発表では、より多くの研究者に現段 階での我々の計画を諮り、広く意見を求めたいと考えている。