低エネルギーイオンコニクスの生成について
*渡部 重十[1], 山田 学[1], 奥 朋之[1], 阿部 琢美[2]
佐川 永一[3]
北海道大学大学院理学研究科[1]
宇宙科学研究所[2]
通信総合研究所[3]
Low-energy ion conics observed by Akebono/SMS
*Shigeto Watanabe[1]
,Manabu Yamada [1],Tomoyuki Oku [1]
Takumi Abe [2],Eiichi Sagawa [3]
Department of Earth and Planetary Sciences, Hokkaido University[1]
Institute of Space & Astronautical Science[2]
Communication Research Laboratory[3]
Akebono/SMS observed low-energy ion conics with <10eV at >2000km
altitudes near cusp and aurora regions. The low energy ion conics
occur in the equator ward region of cusp or in the pole ward
region of cusp. The fluxes for H+ and O+ are larger than 10^10
m-2 s-1. The generation of low energy ion conics is independent
on IMF Bz but the occurrence is strongly associated with low
frequency plasma waves. Since the conics occur boundary regions
in the magnetosphere, the free energy to heat ionospheric ions
may be field-aligned currents associated with the magnetospheric
structure.
あけぼの衛星に搭載されたイオン質量分析器は，極域電離圏上部で
磁力線に垂直なイオン加熱を10年以上継続した観測を行っている．
磁力線に垂直なイオン加熱はコニクスを形成し磁気圏へとイオンを
流出させている．この観測はDE，Polar，FAST，Freja，Cluster 衛星などでも頻繁に観測され，コニクスの発生場所，発生時間，季
節依存性，太陽活動依存性が明らかとなってきた．イオンの流出
は，EISCATなどのレーダー観測によっても得られ，イオン温度の
非対称性やプラズマ波動との関連も明らかとなってきた．しかし，
レーダーで観測される数100km高度で生成されるイオン流と衛星
で観測される数Reでのコニクスとの関連については未だ明らかと
なっていない．コニクスの生成機構として，サイクロトロン共鳴，
LHR共鳴などの波動による励起や，ショックに伴う電場シアーによ
る加速などが提案されている．現在は，波動による加熱・加速が
主なメカニズムであると考えられている．
最近，磁気圏やリングカレント領域にO+がかなりの頻度で存在し
ているらしいことが明らかとなってきた．O+は電離圏起源であるか
ら1eV以下の電離圏イオンが1000倍以上に加熱・加速され磁気圏内
に供給されなければいけない．しかも，磁気圏内に多量に存在する
ことから，電離圏からのイオン供給は連続的に行われていなければ
いけない．また，電離圏でのイオンフラックスはO+よりH+が多いの
で，磁気圏プラズマのかなりの部分が電離圏起源であると考える．
DE，Polar，FAST，Freja，Cluster衛星などはカスプ領域やオー
ロラ領域で大きなイオンフラックスを観測している．しかし，観測
しているエネルギー領域は10eV以上であり必ずしも電離圏イオンを
直接測定しているわけではない．ここに，私たちはイオン加熱・加
速によるイオン流量の見逃しがあるのではないかと考えている．
あけぼの衛星に搭載されたイオン質量分析器は，10eV以下のイ
オン加熱を高度約2000km以上のカスプ領域やオーロラ領域で必ずと
言っていいほど観測する．そのエネルギー分布は明らかにコニクス
の形をしている．カスプ領域の低緯度側あるいは高緯度側でイオン
コニクスは生成され，イオン流量は大きく，いつも定常的に存在し
ている．惑星間空間磁場との関連も見られない．高エネルギーでの
イオンコニクス（>10eV）もしばしば観測されるが，低エネルギー
イオンコニクスは高エネルギーイオンコニクスを含む広い領域で
発生している．低エネルギーイオンコニクスは明らかに磁気圏の
構造と関係した場所で発生している．その領域で常にELF波動も存
在していることから，磁気圏内の電流が低エネルギーイオン加熱
の有力なエネルギー源であると考える．