ロケットによる中間圏・下部熱圏酸素原子密度観測に伴う航空力学的諸効果の 数値研究
*鈴木 利和[1], 岩上 直幹[1]
東京大学大学院理学系研究科[1]
Aerodynamic effects on measurements of atomic oxygen density on board a sounding rocket in the mesosphere and lower thermosphere
*Toshikazu Suzuki[1]
,Naomoto Iwagami [1]
Department of Earth and Planetary Science,The University of Tokyo[1]
Measurements of atomic oxygen density are necessary to study
physics and chemistry in the mesosphere and the thermosphere,
and the only method is measurement from rocket vehicles. But
some aerodynamic effects (shock wave, wake) occurred by their
supersonic motions, and other effects (Doppler shift, absorption
of atomic oxygen on the rockets’ surface) sometimes bring large
error in measured data. The aim of this research is to consider
these effects generally, to represent atmospheric disturbance
around rocket vehicles and error in measured data, and finally
provide general model by which we can correct disturbed data
from direct measurements.
中間圏・熱圏の大気の物理・化学を考察する上で酸素原子密度観測は非常
に重要であり、ロケットはその唯一の観測手段である。しかしその超音速
の運動により引き起こされる航空力学的諸効果(衝撃波、航跡)やその他の
効果(ドップラーシフト、酸素原子のロケット表面への吸着)により、場
合によっては観測データは大きな誤差を含むものとなってしまう。これら
諸効果については定性的には理解が進んでおり、ロケット観測実験におい
てもこれらの効果を軽減する工夫がなされている(S-310-21号機実験以
降)ものの、全観測行程においてこれらの効果を除去することは事実上不
可能である。にもかかわらずこれらの諸効果についての定量的理解は未だ
一般化しておらず、高価なロケットにより得られた観測データの一部は放
置されてしまうのが現実である。本研究ではこれらの諸効果を総合的に考
慮しロケット周辺の大気の擾乱および観測誤差を数値的に再現する。具体
的には2000年1月10日に行われたS-310-29号機実験昇り区間につい
てロケット先端を2次元と3次元軸対象の場合を仮定し、モンテカルロ直
接法により実際の状態(両者の中間的形状であった)を考察する。また同
実験降り区間についてもロケットの形状を円柱と近似し、同様の考察を行
うことを試みる。最終的には以ってロケットによる直接観測データを較正
するに足るモデルの作成を目指す。