327MHz惑星間空間シンチレーションによる2000年7月14日イベントに伴った 惑星間空間擾乱の撮像観測
*徳丸 宗利[1], 小島 正宜[1], 藤木 謙一[1]
山下 真弘[1], 横辺 篤史[1], 大見 智亮[1]
名古屋大学太陽地球環境研究所[1]
Imaging observations of interplanetary disturbances associated with the July 14, 2000 event by 327 MHz interplanetary scintillation
*Munetoshi Tokumaru[1]
,Masayoshi Kojima [1]
Ken'ichi Fujiki [1],Masahiro Yamashita [1]
Atsushi Yokobe [1],Tomoaki Ohmi [1]
Solar-Terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University[1]
We report IPS imaging observations taken with the 327 MHz IPS
system of the STE Lab., Nagoya University, for the July 14, 2000
event. The interplanetary (IP) counterpart to the flare/coronal
mass ejection (CME) which occurred on July 14, 2000 was found
clearly from STEL IPS measurements made on July 14-15.The all-sky
map of the solar wind density disturbance factor (so called "g-value")
derived from our IPS data exhibits approximately symmetric appearance
of IP disturbances in eastern and western hemispheres. Our IPS
data show that the latitude extent of IP disturbances was much
smaller than the longitude one, implying a torus-shape structure
of IP disturbances. The wing part of IP disturbances probed by
IPS was found to expand at slower speed than the central part
directed to the earth.
1.はじめに
1日に多数の電波源について惑星間空間シンチレーション(Inter planetary scintillation; IPS)の観測を実施することで、地上か
らみた太陽風プラズマのマップが描けるようになる。このようなIP Sによる撮像観測は、惑星間空間におけるコロナ質量現象(Coronal Mass Ejection; CME)の3次元構造と伝播特性を研究する上で有効
である。特に、IPS観測から得られる太陽風密度擾乱ファクター(
通称、g値)の全天マップからは、惑星間空間のCMEを効率よく検出
できることが知られている。名古屋大学太陽地球環境研究所(STE研)
では、1997年以降、327MHzのIPS観測からg値データが得られてお
り、それを用いて惑星間空間におけるCMEの研究を行っている。
2000年秋の学会では、2000年6月および7月に発生した惑星間空間
擾乱について、STE研g値データの解析結果の速報を行った。今回の
報告では、以前に報告した擾乱現象の中から7月14日に発生した
Xクラスフレア/CMEに伴って発生したものについて、STE研のg値
データを使って擾乱の全体構造の推定を行った結果について述べる。
2.観測
2000年7月14日 10:24UTのX5.7/3Bフレア(N22W07)に伴って、高速
のHalo型CMEがSOHO/LASCOで観測されている。このCMEが太陽風中を
伝播し、15日14:37UTに地球軌道付近へ到達したと考えられる(この
時間にSOHOやIMPでShockが観測されている)。CMEの伝播速度を一定
とした場合、太陽−地球間における平均速度は1480km/sとなる。
STE研のIPS観測は、毎日7時JST頃(22時UT)から16時JST(7時UT)
の間に実施され、1日当たり30個程度の電波星についてg値が求め
られている。7月14日のフレア/CMEに伴う惑星間空間擾乱は、14日
22時UT〜15日7時UTに取得したSTE研のg値データに明瞭に捉えられ
ている。g値、は視線に沿った太陽風電子密度ゆらぎの大きさ(積
分値)を平均レベルで規格化したものに相当し、CMEが視線を横切
った場合、g値の増加となって現れる。7月14-15日のIPSデータに
は、太陽に対して東側と西側の半球で対称的にg値の増加がみられ
た。このことは、この現象が地球方向へ向かうHalo型CMEに対応する
ことと一致している。
3.解析と今後の課題
7月14-15日に取得したg値データからは、次のことが推定できる。
1)惑星間空間擾乱の緯度方向の拡がりは、経度方向よりかなり
小さい。このことからTorus型の形状をした擾乱の全体像が示唆
される。2)IPSで観測したのは擾乱のWing部分であるが、その
伝播速度は地球方向の伝播速度(1480km/s)より遅い。この違い
は、途中の減速効果を考慮しても有意であり、擾乱の非等方的な
膨張を示唆するものと思われる。
本講演では、これらの効果を考慮した擾乱の3次元モデルを観測
データに最適化することで、緯度/経度方向の拡がりの違いや
伝播速度の非等方性について定量的に評価した結果について報告
する予定である。