中国紅土層(甘粛省朝那)の磁気的特徴
*鳥居 雅之[1], 石川 尚人[2], 宋 友桂[3], 方 小敏[3]
岡山理科大学生物地球システム学科[1]
京都大学大学院人間・環境学研究科[2]
蘭州大学地理学系[3]
Magnetic property of the Chinese red clay from Chaona section, Gansu Province
*Masayuki Torii[1]
,Naoto Ishikawa [2],You-Ggui Song [3]
Xiao-Min Fang [3]
Okayama University of Science[1]
Kyoto University[2]
Lanzhou University[3]
Rock magnetic property of the Chinese red clay from Chaona section,
eastern Gansu Province of China was investigated. The age of
the red clay was estimated to range from 8 Ma to 2.6 Ma on the
basis magnetostratigraphy. We could see five gentle peaks of
the low-field magnetic susceptibility in the red clay sequence.
To understand these susceptibility peaks, various rock magnetic
tests have been applied. We found maghematization is generally
intense at those peaks. Such variation in maghematization is
also found in the loess/paleosol sequences but the intensity
and period seem to be different between the red clay and loess.
中国黄土層の磁化率や他の磁気的パラメータは,過去の環境変動
(気温や降雨量)の指標となることがこれまでの研究によって確立さ
れてきた.黄土層は約2.6Ma以降に風成層として形成されたものである
が,黄土高原ではこの黄土層の下により赤色化した紅土層(red clay) と呼ばれる地層が広く分布している.その厚さは場所によっては黄土
層に匹敵し,百数十メートルにも達する場合がある.最近この紅土層
の古地磁気層序や磁気的性質が注目されだした.この報告は,甘粛省
の東端に位置する凉地区朝那鎮の黄土・紅土の約300mの露頭から採取
された紅土層の磁気的性質についてである.
朝那の紅土層は約130mの厚さがあり,堆積年代は古地磁気層序(宋
他, 2000)によれば約8MaからGauss/Matuyama境界の2.6Maまでであ
る.この紅土層の初磁化率の時間変化は5つのピークをもつ緩やかなサ
インカーブ状を示している.このような緩やかな変化は,上部の黄土
層とははっきリと異なっている.黄土層では磁化率は古土壌層でする
どいピークを示して激しく変動している.この変動は第四紀の激しい
気候変動を反映しているものと解釈されてきた.もし,同じような解
釈が成り立つなら,Gauss Chron以前の気候変動はずっと穏やかなもの
なのかもしれない.
しかし,紅土層の成因については,風成層とする考えが有力のよう
だが,まだ議論の余地はあるようである.ましてや,その磁気的性質
についてはまだ研究は十分行われていない.私たちは,飽和残留磁
化,ヒステリシスパラメータ,高温と低温での磁気特性などの基本的
な方法で朝那の試料群に取り組んでいる.これまでの結果では,初磁
化率の高いピークを示す試料では,そうでないところに比べてマグヘ
マイト化の程度が大きいという事実が明らかになってきた.この事実
は黄土層の場合と同様に,磁化率のピークはその場で形成されたフェ
リ磁性鉱物(マグヘマイト)を示している可能性が大きい.もし,そ
うだとしても,その時間変動はかなり穏やかであり,黄土層に見られ
るような顕著な土壌化作用などがないことから,全く同じようなプロ
セスとはいえないだろう.