口永良部島火山における空中磁気測量

*宇津木 充[1], 田中 良和[1], 神田 径[2], 松島 健[3]

京大・理[1]
京大・防災研[2]
九大・理[3]

Aeromagnetic survey in Kutierabu-jima Volcano.

*Mitsuru Utsugi[1] ,Yoshikazu Tanaka [1],Wataru Kanda [2]
Takeshi Matsushima [3]
Fac. Sci., Kyouto Univ.[1]
DPRI, Kyoto Univ.[2]
Fac. Sci., Kyushu Univ.[3]

To investigate the magnetic structure of the Kutierabu-jima Volcano, we conducted the aeromagnetic surveys in January of 2001. The measurement was conducted along 18 parallel N-S lines with 250 m spacing and 10 parallel E-W lines with 500 m spacing around the Eastern part of Kutierabu-jima using portable high sensitivity Overhauser effect magnetometer. The altitude of flight was kept about 100 to 300 m above the terrain for N-S lines, and constant altitude (about 500m) above the sea level for E-W lines, respectively.

 口永良部島は、屋久島の西14kmに位置する火山島で、記録 に残されているもっとも古い噴火は1841年とされる。以後、 数年から数十年の間隔で新岳山頂火口及びその東側の割れ目 において水蒸気爆発が発生しており、近年では、1933年に始 まる噴火活動で新岳南東部の七釜集落が全滅し死傷者30名以 上を出す災害が発生している。最も最近の活動は1980年9月の 新岳火口東側の割れ目における水蒸気爆発である。この活動 以降現在まで噴火は見られないが火山性地震の活発化等が観 測されており、依然注意を要する火山である。こうしたこと から、この火山の静穏期における磁気構造を把握することを 目的として2001年1月に口永良部火山における空中磁気測量を 行った。このフライトに関しては、鹿児島県防災航空隊の全 面的な協力の下に、消防・防災ヘリコプター「さつま」(ベル 式412EP型、定員17名、全長17.1メートル)を使用させていた だいた。
 磁気測量の領域は、口永良部火山を含む東西5km、南北7km の領域で南北19本(約250m間隔)、東西10本(約500m間隔)の計 29本の側線について行った。総飛行距離はおよそ110km、フラ イト時間は2時間であった。フライトの際の対地高度は、南北 側線では地形に沿って対地200m、東西側線では海抜500mの等 高度を目安とした。磁力計及び飛行位置補足のためのGPSは、 ヘリが曳航するバード内に設置した。バード本体は径40cm、 長さ170cmの塩化ビニール製で、後部に径80cmの円筒形の尾翼 をつけている。また、飛行時の安定性のために鉛の錘(重量約 40kg)を乗せている。また、ヘリの機体の影響を避けるため、 バードはヘリから30m吊り下げて測定を行った。磁力計はGem Systems社製オーバーハウザー磁力計(測定精度0.1nT)を用い、 測定サンプリング0.5秒で逐次磁場計測を行った。また磁場、 GPSの固定観測点を口永良部火山の北西側に設置し、これを磁 場及びGPSのリファレンス点とした。磁場についてはリフ ァレンスとの単純差から磁気異常を求め、GPSについてはバー ドに搭載したGPSのシングルモードによる位置補足と、リファ レンス局とのディファレンシャルモードによる位置補足の結果 の両者を併用してバードの航跡を求めた。
 磁気構造解析に際しては、まず山体が一様に磁化していると 仮定した場合の磁気異常を計算し、これと測定から得られた 磁気異常との差をとることで地形補正を行った。 この際、実測値との差を最小にする山体の磁化の強さは2.1A/m だった。 この後、山体を250x250x250mの角柱に分割し、地形補正後の 磁気異常を最も良く説明するよう、それぞれの角柱の、一様 磁化を仮定した場合の磁化(2.1 A/m)からのずれを、最小自 乗的に求めた。この際、磁化方向は全ての角柱で一様(dip=45 deg., inclination = N8E deg.)と仮定した。