最近の太陽周期における
GPS-TECの変動特性 − (2)

*鷲尾 裕[1], 田口 聡[1], 奥澤 隆志[1]

電気通信大学[1]

Characteristics of the GPS-TEC Variations Observed at Tokyo during the LastSolar Cycle - (2)

*Yutaka Washio[1] ,Satoshi Taguchi [1],Takashi Okuzawa [1]
Univ. of Electro-Communications[1]

We have calculated TEC's using IRI(International Reference Ionosphere) model to compare with TEC's derived from GPS measurements made at Chofu, Tokyo, for 1992-2000. A preliminary result is that the contribution from the Protonosphere to GPS-TEC is significant in midnight hours, which is comparable to that of the ionosphere.

筆者らは、1992年から現在まで電通大キャンパス(北緯35.65度、東経 139.49度)においてGPS衛星からの2周波(1227.60および1575.42MHz)を 利用するTECのルーチン観測を継続してきた。測定原理は群遅延差法であ る。これによるTECのデータベースはほぼ1太陽周期をカバーしている。 そこで、太陽活動度を主な着目パラメータとして、TECの年、季節、日周 の各変動を、通総研国分寺の(foF2)**2との関連性、およびこれを利用し て求めるslab thicknessの特性について調べたところ、これまでに以下 のような結果を得ている。(1)TECの大きさは太陽活動度にほぼ比例して年 変化している。(2)太陽活動度の高い年にはTECの大きさは全体として夏期 よりも冬期のほうが大きい。(3)TECの昼間値の夜間値との比は、夏期を除 いて(foF2)**2のそれに比べて小さい。この特性は太陽活動度と無関係に みられる。(4)slab thicknessの夜間値は全体として太陽活動度とほぼ比 例して年変化しているが、昼間値はほとんど変わらない。

今回は上記の観測結果を踏まえて、高度2,000kmまでのTECを求めることが 可能なIRI(国際標準電離圏)モデルを使用してTEC(便宜上、IRI-TECと以 後よぶ)を理論計算し、これを上記の特性と比較した結果を述べる。な お、IRIモデルには原理的に、地上位置、日付、時刻を入力することによ り、高度の関数として電子密度はもちろんのこと、TECも数値的に求める ことのできる機能が付いている。主な結論は、現状では以下のようにな る。昼間(正午)、GPS-TECとIRI-TECとの間にそれほど大きな差異は無い のに反して、夜間(真夜中)にはGPS-TECのIRI-TECに対する比が最大2程 度になる。このことは、高度約20,000kmの軌道上のGPS衛星によるTECに 対する陽子圏の寄与が、夜間に電離圏のそれと同程度になることを示し、 上記の(3)を裏付けている。観測された上記のGPS-TECの変動特性を、 IRI-TECの計算結果と比較しながら、今後詳細に検討していきたい。