トルコ・イズミット地震前後の電磁場データの解析
*本蔵 義守[1], 大志万 直人[2], 松島 政貴[1]
Bulent Tank[1], Mustafa Kemal Tuncer[3]
Elif Tolak[3], Cengiz Cerik[3]
東京工業大学[1]
京都大学[2]
ボアジチ大学[3]
Analyses of electric and magnetic data obtained before and after the Izmit earthquake
*Yoshimori Honkura[1]
,Naoto Oshiman [2]
Masaki Matsushima [1],Bulent Tank [1]
Mustafa Kemal Tuncer [3],Elif Tolak [3],Cengiz Cerik [3]
Tokyo Institute of Technology[1]
Kyoto University[2]
Bogazici University[3]
MT observations were being made just above the focal area of
the Izmit earthquake when it occurred on August 17, 1999. The
data set is extremely important, but so far we have made rather
preliminary analyses. Here we report our further analyses of
the MT data. We already pointed out that no clear anomalies could
be found immediately before the earthquake. In this report we
focus our attention to the data covering some days before and
after the earthquake.
1.はじめに
1999年8月17日,トルコ北西部のイズミット市付近でMw=7.4の地震
が発生し,大きな被害をもたらした.この地震が発生したとき,
震源域の直上でMT観測を行なっていた.これまで,地震直前の
電磁場に異常変化は見られないことを報告しているが,今回さらに
解析を進めたので,その結果を紹介する.
2.データ
MT観測は24Hzサンプリングで行なっており,膨大なデータと
なるため,ここでは主として1分平均値を扱うこととした.震源域
近傍の4観測点を対象とし,参照データとしてMT参照点のデータも
使用した.電磁場に異常変化が見られるかどうかを調べることが
目的であるので,既知の自然電磁場変化を取り除くことが必要となる.
そこで,参照点の水平磁場2成分を用い,線形予測の手法
(Wiener Filter)を用いることとした.
この他に,自然電位の長期的変化がないかどうかを調べたいので
あるが,電場記録はハイパスフィルターがかかっているため,
現記録からはSP変化を調べることはできない.そこで,毎日の記録
回収時の電位測定の記録を用い,長期的変動が見られるかどうか
吟味した.
3.結果
1分平均値については,既知変化の予測はかなりよく,予測値を
現データから差し引くことにより,変化はかなり小さくなる.
とくに,磁場データで非常に効果的であることがわかる.残差を
詳しく検討すると,地震前の2〜3日間,他の期間に比べて変化が
大きいことがわかった.ただし,
この期間の自然電磁場の振幅が大きいことから,予測手法から生じる
見かけのものである可能性もあり,さらに検討を要する.
SPについては,電極起因のドリフトとの区別が難しいものの,例えば
参照点における長期的ドリフトデータを参照すれば,震源域近傍の
各観測点でSPに異常があったかどうか検討はできる.結論は
異常変化は見られないということになった.