月起源ピックアップイオンの太陽風による輸送
*横田 勝一郎[1], 齋藤 義文[1], 向井 利典[1]
宇宙科学研究所[1]
Transport of the pick-up ions originating from the Moon
*Shoichiro Yokota[1]
,Yoshifumi Saito [1]
Toshifumi Mukai [1]
ISAS[1]
The tenuous atmosphere of the Moon consists of the particles
that are sputtered from the lunar surface materials by the following
process- es: (1) sputtering by the solar wind, (2) desorption
by the solar UV, and so on. The composition of the pick-up ions
sputtered from the Mo- on reflects the lunar surface composition.
In order to trace the spu- ttering point on the Moon's surface,
the transport of the pick-up io- ns under a variety of the solar
wind condition is important. We cons- ulted the transport of
the pick-up ions sputtered from the Moon and calculated the flux
of them around the Moon. We used the deorption and sputtering
parameters that have been revealed by some recent lab- oratory
experiments. The data of the GEOTAIL satellite when the sate-
llite was near the moon is also analyzed.
月は非常に希薄な大気を持つことが知られているが、大気の生成メ
カニズムとして以下のものが考えられてきた。(1)固有磁場を持た
ない月の表面に太陽風が衝突することによって起こるスパッタリン
グ。(2)太陽のUVによるアルカリ粒子の放出。(3)微小隕石の衝突
による月表層物質の気化作用。(4)熱による放出。中でもスパッタ
リングは月表層物質を構成するほとんどの粒子を放出させるので、
この粒子を観測することで表層物質のリモートセンシングを行うこ
とが期待されている。将来には、我々が開発を行っているイオン計
測器によって、イオンとして放出されたもの、および中性粒子とし
て放出されて後に光電離されたものを、2005年に打ち上げられる月
探査衛星SELENEの100km高度の軌道上で観測する予定である。月起
源イオンの放出時のエネルギーはせいぜい10eVにも満たないのだが
、太陽風にピックアップされることで月の重力を抜け出し衛星高度
に到達する。このため、太陽風の電場・磁場等のパラメータを押さ
えることで、地表面付近まで逆トレースして放出地点を求めること
が出来るので、衛星上で得られるピックアップイオンの組成比を月
表面に反映することが可能になる。そこで、月起源のピックアップ
イオンのフラックスの動向、例えば太陽風の変動に対する依存性な
どといったことが重要になってくる。
月起源のピックアップイオンは、これまでにAMPTE/IRM、WIND等で
観測されているが、何れも月の観測を目的とした衛星ではないので
データ量は少なく、質量スペクトルを出すに留まっている。また、
ピックアップイオンの数値計算も行われているが、そもそも放出メ
カニズムに不明な点が多いため、いくつものパラメータを仮定しな
ければ行うことが出来なかった。最近では放出メカニズムに対する
室内実験によって、アルカリ粒子に関しては放出メカニズムが明ら
かになりつつあり、より定量的な数値計算が可能になっている。そ
こで今回は、主にアルカリ粒子について太陽風の変動も考慮してピ
ックアップイオンの軌道計算を行い、フラックスの空間分布等を求
めた。また、GEOTAIL衛星がLEP onの状態で、過去にスイングバイ
のため6回接近している時があったので、その時のデータも使用し
、数値計算の結果と比較検討を行った。今学会では、以上のことに
ついて報告を行う予定である。