日本周辺のスプライト・エルブスの発生と電離圏・熱圏への影響

*高橋 幸弘[1], 足立 透[1], 宮里 梨奈[1]

東北大学[1]

Effects of sprites/elves on the thermosphere and ionosphere around Japan

*Yukihiro Takahashi[1] ,Toru Adachi [1],Rina Miyasato [1]
Tohoku University[1]

We have conducted the observation campaign of sprites/elves in winter since December 1998. Optical instruments and VLF wave receivers have been installed at two observation sites. Totally, 21, 2, and 11 sprites were recorded in 3 winter seasons, respectively. The elves were detected more frequently than sprites. For instance, during 2000/2001 campaign 26 elves appeared on single night. The number of sprites/elves event is strongly dependent on the parental thundercloud activity and weather conditions above the observation site. These optical emissions are considered to be closely related to the atmospheric heating and ionization in the middle and upper atmosphere.

我々は1998年より毎冬、日本周辺のスプライト及びエルブスの 光学観測を実施してきた。出現位置の三角測量を行うため、仙 台及び埼玉県或いは群馬県に光学観測機器とVLF受信機を設置 している。これまでの3シーズンで、スプライトはそれぞれ21 個、2個、11個撮像されているが、エルブスはそれよりも多く、 一晩で26個捕らえられたこともあった。冬季日本のスプライ ト・エルブスの活動は、本州上空を西から東へと通過する寒冷 前線の活動に強く関係している。1998/1999年は、寒冷前線が 日本海上を本州に向かって近付き北陸地方に達するまでの間、 スプライトの活発な出現が記録されている。また、1999/2000 年及び2000/2001年のキャンペーンでは、本州東海上に抜けて 陸地から500kmも離れた寒冷前線付近でスプライトの発生が認 められた。また、その寒冷前線と陸地との間で生じた雲の上空 にも現れることがある。これらの冬季日本に見られる雷雲は、 夏季に米国大平原でスプライトを作り出す雷雲とは、水平及び 鉛直スケールが大きく異なっているが、そうした違いが、スプ ライトの発光高度、形状、継続時間などとどのように関係して いるかが、スプライトの発生メカニズムを解く上で重要な鍵と なる。これまでは冬季に限って観測キャンペーンを実施してき たが、今年からは夏季も含め、通年で観測体制を維持すること にしている。夏季の関東地方での雷放電活動は、エルブスの頻 繁な出現を招いている可能性が非常に高い。こうした発光現象 の活発な出現は、それらに伴って、中層・超高層大気を著しく 加熱・電離していると推測されている。最近の米国における観 測では、一つのスプライトは5分以上の化学的な影響を中層大 気に残していることが示唆されている。また、下部電離圏での 計算機シミュレーションは、電子密度を1桁近く上昇させ、そ の影響は約30分も続くことを示している。本講演では、これま での日本周辺におけるスプライト・エルブス観測の結果をもと に、中層・超高層大気や電離圏に対する雷放電活動の影響につ いて議論する。