木星デカメートル電波の長期変動における要因の検討

*河内 亜希子[1], 小野 高幸[1], 飯島 雅英[1]

東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻[1]

Estimation of the effects on the long term periodicity of Jovian decametric radiation

*Akiko Kawauchi[1] ,Takayuki Ono [1],Masahide Iizima [1]
Tohoku University, Graduate School of Science, Deperatment of Geophysics[1]

From long term observations, it has been found that the occurrence probability of the Jovian decametric radiation (DAM) changes in an eleven-year or a twelve-year cycle. The long term variation of DAM is thought to be caused by a shielding effect of terrestrial ionosphere, or a change of the Galactic background noise level. In this paper, an effect of the shielding by the terrestrial ionosphere is examined based on the occurrence probability obtained by observations of DAM at ZAO laboratory of Tohoku University from 1974.

 地上観測における木星デカメートル電波の出現頻度は、 木星の自転に伴う約10時間の短期変動の他に、約11〜12年の 周期変動を持つことが知られている。 この長期変動の原因は、地球と木星電波源との位置関係に伴う 幾何学的な効果(De効果)が要因であると現在主に考えられて いるが、レイトレーシング法によりCML-イオ位相角ダイアグラム 上での出現パターンのDe依存性を定量的に検討した結果、 Deの変化による幾何学的な影響は、出現頻度の変動に影響を 及ぼさないという結論を得た。このことから、長期変動に 影響を及ぼす他の要因を考えることが必要である。 そこで本研究では、木星デカメートル電波の長期変動の全体像を 知るために、地上観測において及ぼされる影響に着目し、 木星デカメートル電波の地上観測における出現頻度に周期的に 影響を及ぼすものとしてどのような要因があり、それらが どの程度寄与するか見積もることを目的とする。
 1974年から東北大学蔵王観測所において定常観測が続いている radiometerのデータを用いて、木星デカメートル電波の出現頻度が 導出される。長期変動に寄与する要因として、地球電離層の 遮蔽効果や銀河のバックグラウンドノイズの影響などが考えられる。 地球電離層の密度が変化した場合、木星デカメートル電波の 全反射を起こす入射角が変化する。 地球電離層も太陽活動に伴う11年変化を繰り返すことから、 木星高度とfoF2値の変動によって木星電波が地上に到達できない 時間帯が変動することになるためである。 また、木星デカメートル電波の強度によっては、 数dB程度の変動を持つ銀河のバックグラウンドレベルに 埋もれてしまう可能性もあるため、銀河中心方向と木星との 相対的位置関係の変動が木星電波の観測に影響を及ぼすことになる。 今回は特に地球電離層の遮蔽効果について、foF2の1時間値を用いて 木星デカメートル電波の出現頻度との関係を考察し、 その効果を定量的に評価する。