コア−マントル境界における熱流束不均質性を考慮した回転球殻内熱対流 シミュレーション

*高橋 太[1], 松島 政貴[1], 本蔵 義守[1]

東京工業大学大学院地球惑星科学専攻[1]

Numerical simulations of thermal convection with lateral variations in CMB heat flux

*Futoshi Takahashi[1] ,Masaki Matsushima [1]
Yoshimori Honkura [1]
Department of Earth and Planetary Sciences, Tokyo Institute of Technology[1]

A number of numerical simulations of three-dimensional thermal convection in a rotating spherical shell are performed. Emphasis is put on the thermal core-mantle coupling through the heat flux heterogeneity on core-mantle boundary (CMB). Convection pattern is strongly influenced by imposed heterogeneity and separated into two regions, one is active convection region and the other is nearly stagnant region, they appear in accordance with the distribution of heterogeneity. These results indicates the important effects of thermal core-mantle coupling on convection structure and dynamo process in the Earth's outer core.

地球深部において外核はマントルから熱的、電磁気的、地形的、化学的 等様々な影響を受けていると考えられている。Bloxham and Gubbins (1987)においてコア-マントルの熱的結合がコアダイナミクスに非常に 大きな影響を持つと示唆を与えて以後、Glatzmaier et al. (1999) においてコア‐マントル境界(CMB) における熱流束の不均質性が 双極子磁場の逆転頻度を制御していることが示され、核とマントルの 熱的結合が地球核内でのダイナモ作用に多大な影響を与えていること が明らかにされてきた。しかしながら、実際に熱的結合が核内対流に 及ぼす影響とそれによる磁場生成の構造などは詳しくは調べられて いない。 (例として Sun et al., 1994, Sarson et al., 1997 等がある)
近年数多くのMHDダイナモシミュレーションが行われ、多大な成果 を挙げているが、地球核内で推定されるエクマン数(粘性とコリオリ 力の比)を数値計算で実現することは未だ不可能である。そこで、 地球核内での流れは乱流的であると考えられることから、拡散率を 分子拡散率から渦拡散率に置き換えて考えたり、更に人工的に超拡散率 を与えて数値計算を行っている例は少なくない。しかしながら、 超拡散率の使用はその理論的裏付けの弱さのため、十分に注意しな ければならない。
本研究ではコア−マントルの熱的結合が対流構造に与える影響と、 最終的にはダイナモ作用へ及ぼす影響を調べることを目的としている。 第一段階としてCMBにおける熱流束の不均質性が流れに与える影響を 調べるために回転球殻内におけるブシネスク流体の3次元熱対流の 数値シミュレーションを行った。その際上記の超拡散率や、赤道面 に関する対称性等の仮定は用いていない。 無次元パラメーターとしてプラントル数(Pr=1)、エクマン数(E)、 レイリー数(Ra)、内核の大きさ(ri/ro=0.35)を用い、エクマン数を 5x10^-5 〜5x10^-4、レイリー数を最大で臨界値の7倍程度 に設定した。CMBでの熱流束の不均質性をパラメーターεであらわし、 0〜ε〜0.5 程度の不均質性を与えた。ε=1の時、不均質場と基準場の 振幅が同じであることを意味している。その結果、強い不均質性を 与えた場合には対流が活発に起こる領域と不活発な領域が不均質の パターンに従って現われる現象が確認された。熱がCMBから供給される 領域では対流があまり起こらず、熱が奪われるようなところでのみ 活発な対流が起こっている。この結果はCMBでの不均質が核内の流れを 制御する重要な要因である事を示しており、更には、ダイナモ作用に 対し大きな影響を与えている可能性を示唆している。
今後は磁場を考慮したMHDシミュレーションを行う予定である。