プエルトリコでの全天イメージャとアレシボISレーダーを用いた電離圏波状構造の同時観測

*猪原 智昭[1], 塩川 和夫[1], 大塚 雄一[1]
小川 忠彦[1], 斉藤 昭則[2], Michael C. Kelley [2]
Nestor Aponte[3]

名古屋大学太陽地球環境研究所[1]
Cornell University, Ithaca, NY[2]
National Astronomy and Ionosphere Center, Arecibo, PR[3]

Observations of mid-latitude F-region structures with an all-sky imager and the Arecibo IS radar in Puerto Rico

*Chiaki Ihara[1] ,Kazuo Shiokawa [1],Yuichi Otsuka [1]
Tadahiko Ogawa [1],Akinori Saito [2]
Michael C. Kelley [2],Nestor Aponte [3]
Solar-Terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University[1]
Cornell University, Ithaca, NY[2]
National Astronomy and Ionosphere Center, Arecibo, PR[3]

We have studied seasonal variations of mid-latitude TID activity using all-sky ariglow images at 630nm. However, it is not still clear whether the gravity waves or the Perkins instability cause the TIDs. Three-dimensional measurement of TIDs is crucially important to distinguish these two possible mechanisms.
During July 9-22, 2001, observations of TIDs were conducted using an all-sky imager and the Arecibo IS radar in Puerto Rico. In this presentation, we show detailed analysis of these data that can give three-demensional structure of mid-latitude TIDs.

名古屋大学太陽地球環境研究所では、複数の光学観測機器による超高層大 気イメージングシステム(Optical Mesosphere Thermosphere Imagers : OMTI)を開発し、北海道陸別観測室(43.5°N, 143.8°E)と滋賀県 の京都大学信楽MU観測所(34.9°N, 136.1°E)において、1998年10月 より夜間大気光の連続観測を行っている。その一部である全天大気光イメ ージャーから、OI(630nm)大気光の2次元イメージングデータを得るこ とができる。OI(630nm)の発光領域は高度200-300kmに分布するため、 そのデータを解析することによって、日本上空の移動性電離圏擾乱 (TID) の2次元的な様子がわかる。これまでに1998年10月から2000年9月までの データについて統計的に解析を行い、TIDの季節変化が明らかになった。
現在、TIDの生成機構として2つの機構が考えられている。大気重力波と プラズマ不安定の一種であるPerkins不安定である。しかし、この両者の 間にはプラズマの運動に違いがあり、つくられる電子密度変動の分布も異 なる。大気重力波が電離圏中を伝搬するとき、中性大気が振動することに よって電離圏プラズマは沿磁力線方向に動かされる。これまでに、全天イ メージャの観測で得られた TIDの周期(0.5-1.5時間)と水平波長 (100-300km)から分散関係式を使って鉛直波長を予想すると50km程度に なる。そのため、TIDの波面は磁力線の傾き(約45度)よりも水平に近い。 このため、磁力線方向のプラズマの速度は磁力線方向にシアーをもち、電 子密度の収束、発散が起こる。その結果、電子密度の空間変動がつくられ る。一方、Perkins不安定が起こるとき、分極電場によって電離圏プラズ マが磁力線直行方向に動かされる。分極電場は磁力線に沿って伝わるた め、磁力線直行方向のプラズマの速度は、磁力線に沿って一様となるはず である。この両者の違いから、 TIDをつくるプラズマの運動を三次元的に 捉えることによって、電子密度変動が大気重力波によるものかPerkins不 安定によるものかを明らかにすることができる。プエルトリコのアレシボ 観測所 (18.2°N, 66.5°W)の非干渉性レーダー(IS radar)は、プラズ マのドリフト速度と電子密度の高度分布を数%以下の高精度で観測するこ とができる。大気光の水平二次元分布と合わせることによって、電子密度 変動の三次元構造を明らかにできる。そのため、2001年7月9日から22日の 13晩、アレシボ観測所から約200km東に位置するプエルトリコ・クレブラ 島に名古屋大学太陽地球環境研究所の全天イメージャを持ち込み、アレシ ボのISレーダーと電離圏同時観測を行った。全天イメージャの観測は13晩 87.7時間行った。観測中の晴天時間は50.7時間であり、そのうち5晩20.4 時間に大気光波状構造を確認することができた。その多くは、南西方向に ほぼ一定の速度で伝搬するTIDの波状構造であった。また、7月18日0:30LT から3:15LTにかけて、Midnight Temperature Maximum (MTM)に関係す ると思われる南から北への大気光の増光を観測することに成功した。この 間、アレシボのISレーダーは7月15日から19日にかけて、観測を行ってい る。本講演では、全天イメージャとISレーダーのデータからTIDの三次元 構造を詳しく調べ、その結果を報告する。