トロムソで観測された準2日波の季節変化

*今井田 星子[1], 野澤 悟徳[1], 藤井 良一[1]
Asgeir Brekke[2], Chris M. Hall[2], Chris Meek[3]
Alan Manson[3]

名古屋大学太陽地球環境研究所[1]
Faculty of Science, University of Tromsoe[2]
ISAS, University of Saskatchewan[3]

Seasonal variation of quasi-two day wave observed at Tromsoe

*Seiko Imaida[1] ,Satonori Nozawa [1],Ryoichi Fujii [1]
Asgeir Brekke [2],Chris M. Hall [2],Chris Meek [3]
Alan Manson [3]
STEL, Nagoya University[1]
Faculty of Science, University of Tromsoe[2]
ISAS, University of Saskatchewan[3]

Characteristics of quasi-two day wave (so-called 2-day wave) are examined using wind data obtained with the Tromsoe MF radar located at 69.6 deg N. Contrary to middle/low latitude, there are few studies of the 2-day wave conducted at high latitude. By analyzing wind data obtained between January 1, 1999 and June 30, 2001, we have found the followings: (1) the amplitude of meridional component of the quasi-two day wave is stronger by a factor of about 1.5 than that of zonal component, (2) the amplitude of the quasi-two day wave varies at 4-10 day rate, (3) the period of the quasi-two day wave is about 48 hours in summer, but it tends to be longer in winter.

  大気下部より伝播してくる大気潮汐波、プラネタリー波、重力 波の極域下部熱圏大気ダイナミクスに対する影響を定性的、定量的 に解明することを目指し、EISCAT UHFレーダー及びトロムソMFレー ダーを用いて研究を進めている。今回は、前回に引き続いてトロムソ MFレーダーにより観測された準2日波の振る舞いについて報告する。   Huuskonen et al. [1991]は、EISCAT UHFレーダーによって 1988年3月20日から4月10日に得られた観測データを解析し、下部熱 圏において半日潮汐波成分の強度が周期約2.2日で変動することを 示した。この変動は準2日波との相互作用により生起していると解釈 した。 また、van Eyken et al. [2000]は、EISCATスヴァールバル レーダーより得られた中性風データを周期解析し、高度93 kmにて 半日潮汐波成分に加え2.5日、16.8時間、9.6時間周期変動成分が 有意な強度を持つこと示した。そして、これらの16.8時間、9.6時間 周期変動成分が、準2日波と半日潮汐波の相互作用により生成されて いることを示唆した。このように準2日波は、下部熱圏大気ダイナ ミクスに対して無視できない影響を与えていると考えられる。 しかし準2日波に関して、低中緯度では多くの研究が行われているが、 高緯度においては未だ十分な研究がなされていない。   前回の講演(今井田他、2001年合同大会)では、トロムソMFレー ダーにより1999年1月から 2001年5月の約2年半にわたって得られた高 度約70 kmから約91 kmまでの中性風データを用いて、Lomb-Scargle法 により周期解析を行った結果を報告した。特に2日周期波が、冬期に おいては全高度範囲で有意に観測されるが、夏期には上部中間圏 (82 km以上)にてのみ観測される季節変化を示した。この一つの解釈 として、冬の中間圏では、プラネタリー波は上方伝播が可能である が、夏においては不可能である。その一方で、夏では、プラネタ リー波の南半球(冬半球)から北半球(夏半球)へのダクト伝播が 考えられる。   さらに解析を進めた結果、次のことが明らかになった。(1) 準2日波の南北成分の強度は東西成分と比べて強く、その比は約1.5 である。(2) 準2日波の強度は南北・東西両成分とも4日から10日の 周期で変動している。(3) 準2日波は、夏は48時間周期で変動する が、冬はより長い時間周期にシフトする。講演では、これらのこと について位相の振る舞いを交えて報告するとともに、準2日波の 上方伝播性についても議論する。 Reference: Huuskonen et al., Ann. Geophysicae, 9, 407, 1991. van Eyken et al., Geophys. Res. Lett., 27, 931, 2000.