SS-520-2号機搭載電子/イオンエネルギー分析器(ESA/ISA)によって観測された電子加速とイオン減速
*石井 真一[1], 齋藤 義文[1], 田中 宏樹[1]
浅村 和史[1], 向井 利典[1]
宇宙科学研究所[1]
Simultaneous observation of the electron acceleration and ion deceleration by ESA/ISA on board SS520-2
*Shinichi Ishii[1]
,Yoshifumi Saito [1],Hiroki Tanaka [1]
Kazushi Asamura [1],Toshifumi Mukai [1]
Institute of Space and Astronautical Science[1]
A sounding rocket SS520-2 was launched from NyAlesund Norway
on 4 December, 2000 into the dayside cusp region. ESA and ISA
are Toroidal top hat type electrostatic analyzers that can obtain
energy spectrum of the low energy electrons and ions with a time
resolution of 20msec. Simultaneous observation of the low energy
electrons and ions revealed that there were some periods when
electrons were accelerated and ions were decelerated. We found
that the energy of the ion deceleration was almost the same as
that of the electron acceleration. We also found an example that
the electron acceleration was observed several seconds earlier
than the ion deceleration. These observational results suggest
the existence of the temporally changing electric field above
the sounding rocket.
観測ロケットSS-520-2号機が昨年12月4日ノルウェーのスッピッツベルゲン島からカスプ領域に向けて
打ち上げられた。我々はこの観測ロケットに電子/イオンエネルギー分析器(ESA/ISA)を搭載し、低エネ
ルギー電子・イオンの観測を行った。ESA/ISAは高度約500kmで観測を開始、最高高度の約1100kmに
到達した後、高度約140kmで観測を終えるまでの間正常にデータを取得した。ESA/ISAは2台のTroidal Top-Hat型静電分析器であり、各々360度の視野を持つ。入射口からセンサー内に入った荷電粒子は、
トロイダル型の偏向電極に印加された電圧に応じてエネルギー選別され、検出器であるMCP(Micro Channel Plate)に入射する。MCPで増幅された荷電粒子は、MCPの背後にある円形のアノードで検出
されるが、この際粒子の入射方向はアノード上の粒子位置に応じて出力される2つのパルス信号間の
時間差を計測することで決定できる。ESA/ISAは10eVから10keVのエネルギー範囲を32のエネルギー
ステップで計測する。32全エネルギーステップの掃引には40msを要するが、その半分の16エネルギー
ステップで全エネルギー範囲をカバーする事が可能であり、その時間分解能は20msと過去最高レベル
である。
ISAによって得られた低エネルギーイオンのデータを調べたところ、ロケットの緯度に応じて降り込みイ
オンのエネルギーが変化していることがわかった。これはカスプ領域へ流入したイオンが対流により流さ
れ、高緯度程観測されるイオンのエネルギーが低くなる事に対応している。このことからロケットはカスプ
の高緯度側を飛行した事が推察される。一方ESAによって得られた低エネルギー電子のデータには電場
で加速されたInverted-Vに似た降り込み電子が観測された。ここで特徴的なのが加速された降り込み
電子の出現と共に降り込みイオンが消えるか、もしくは減速を受けているように見えることである。電子
加速・イオン減速が起こった際の電子のエネルギーの増加量とイオンのエネルギーの減少量を比べて
みると、両者はほぼ一致する事がわかった。これはロケット上空にある電場によって電子が加速され、
逆にイオンが減速されていると考えると説明がつく。イオンの減速量が測定できるためには、元々の降り
込みイオンのエネルギーがちょうど適当な範囲にある必要がある。エネルギーが低過ぎる場合にはイオ
ンのデータは消えてしまい、逆にエネルギーが高過ぎるとそもそも減速があったかどうかさえ感知できな
いからである。今回はカスプから流入したイオンが対流に流される事で適当なエネルギーとなったため、
イオンの減速量の測定できるデータが得られたものと考えられる。更に加速電子の出現タイミングとイオ
ンの減速のタイミングを調べたところ、加速電子がイオンの減速よりも早く観測される事のあることがわ
かった。加速電子と減速イオンの出現タイミングに差があることはロケット上空に時間的に変化する電場
があることを示している。