太陽デカメータ電波観測を目的とした干渉波除去型偏波計の開発

*石塚 健太郎[1], 近藤 哲朗[2], 冨澤 一郎[3]

通信総合研究所研修生/電気通信大学[1]
通信総合研究所鹿島宇宙通信研究センター[2]
電気通信大学菅平宇宙電波観測所[3]

Development of interferometric polarimeter for decametric Solar radio burst observations.

*Kentaro Ishizuka[1] ,Tetsuro Kondo [2],Ichiro Tomizawa [3]
Communications Research Lab./The Univ. of Electro-Comm.[1]
Communications Research Lab.[2]
Sugadaira Space Radio Observatory, The Univ. of Electro-Comm.[3]

The sun radiates burst-like radio waves at a decametric wave length. To investigate detailed characteristics of these emissions, it is necessary to measure polarization status at a wide frequency band. Recently, in accordance with a progress of human activities, condition of natural radio wave measurements becomes worse year by year due to the increase of artificial noises at lower frequencies. Thus, it is difficult to observe the polarization parameters precisely, in particular, in the daytime. To overcome these difficulties we have been developing a polarimeter that can observe precise polarization status under the condition of strong interference signals.

 太陽からはデカメータ波帯において、バースト的な電波が放射されて いる。これらの電波の詳細な性質を解明するためには、偏波状態の広帯 域かつ高精度計測が不可欠である。しかし近年、社会生活の利便性の向 上と共に低周波数帯での混信や人工雑音が増大し、自然電波観測環境は 悪化の一途をたどっている。そのため、微弱な自然電波放射の偏波計測 は難しくなってきており、特に通信や人工雑音の多い昼間の太陽電波観 測における広帯域偏波計測は、非常に困難な状況である。そこで本研究 では、混信波成分を効果的に取り除き、デカメータ波帯における太陽か らのバースト的な広帯域電波放射の偏波観測を可能とするため、干渉波 除去型偏波計という新しい考え方でのシステム開発を行っている。この システムの原理、および実観測により有効性を評価した結果について報 告する。  偏波の観測では、直交アンテナの同一局(A局)でのX成分(Ax)とY 成分(Ay)の位相差を求めることにより、右旋・左旋の偏波強度がわ かる。したがってAx−Ayの相関関数から位相差を求めれば良い。しかし 同一局での観測ではアンテナが空間的に同じ位置にあるため、Ax、Ay双 方に混信波成分が混入してしまい、これが取り除ききれないために精度 が落ちる。そこで本研究では、空間的に離れた位置にもう1局のアンテ ナ(B局)を立ち上げ、B−Ax、 B−Ayの相関関数から間接的にAx−Ay の位相差を計算する事により、混信波成分の影響を取り除く。  通信総研鹿島内において干渉波除去型偏波計システムのプロトタイプ を構築し、既存のKaRASシステム(低周波自然電波観測装置:受信周波 数 25〜 70MHz)と対になるもう一方の局の整備を行った。観測周波数 帯は 25〜 30MHzとし、木星電波観測への応用も考慮した。これまでに、 システム構築のためにフロントエンド部で必要となるビデオ変換器・影 像周波数除去ミクサ (IRM)を製作し、その性能評価を行った。製作した IRM回路は観測に十分な帯域幅(7MHz)を持つ事を確認した。また、8〜 30MHzの入力周波数において、 20dB以上のイメージ分離度が得られてお り、現在、干渉波除去型偏波計システムの実観測を開始すべく、準備を 進めている。(発表時に初期観測の結果について報告予定)  1980年代後半に通信総研鹿島で行われた木星偏波観測では、夜間であ っても混信の問題が偏波パラメータに大きな影響を与える事が分かって いる[1]。本研究では干渉波の除去を目的とする事から、さらに条件の 悪い昼間の太陽電波観測を目指している。将来的には遠隔地にKaRASシ ステムと対になる干渉計のもう一方の端局を立ち上げ、広帯域でのスト ークスパラメータの高精度決定を目指している。 参考文献 [1] Kondo,T. : Jovian decametric radio wave radiation observations(1985-1986)using the K-3 VLBI system ; Journal of the Communications Research Laboratory, Vol38, pp.623- 632,1991.