地球磁気圏バウショック近傍における波動励起機構に関する計算機実験

*岩田 元希[1], 松本 紘[1]

京都大学 宙空電波科学研究センター[1]

Computer Experiments on the Plasma Wave Generation in the Terrestrial Bow Shock

*Motoki Iwata[1] ,Hiroshi Matsumoto [1]
Radio Science Center for Space and Atmosphere, Kyoto University[1]

Plasma wave receivers onboard the GEOTAIL spacecraft observed various plasma phenomena in the terrestrial Bow Shock. The main objective of the present paper is to study the generation mechanisms of plasma waves observed around the terrestrial bow shock by conducting the full-particle computer simulations. We conducted 1D and 2D computer simulations in the case of the quasi-parallel shock and perpendicular shock. We found that characteristic waves obserbed around terrestrial bow shock are reproduced in these simulations. We discuss their generation mechanisms of these waves based on the computer simulation results.

科学衛星GEOTAILは地球磁気圏バウショック周辺における波動観測を 行い、様々なプラズマ波動の観測に成功した。これらの波動の励起 機構についてはいくつかの不安定性が提案されているが、まだその 特定には至っていないものがほとんどである。 そこで本研究の目的は、GEOTAIL衛星で観測された非線形波動現象を 計算機シミュレーションで再現し、バウショック周辺でのプラズマ 波動の励起機構を解明することである。衛星観測からバウショック 周辺でのプラズマ波動は、電子のダイナミクスに関係していると 考えられる。したがって、電子、イオン両方を粒子として扱う 電磁粒子コードを用いることで、バウショック周辺での粒子と波動の 相互作用とその非線形発展を電子のスケールまで含めて解析すること ができ、衛星観測プラズマ波動データと比較してそこで発生している 特徴的な波動がどのようなメカニズムで発生して、その非線形発展の 結果、どのような平衡点に到達することができるのかを明らかに することができる。
まず、準平行衝撃波に対して一次元の計算機実験を行い、観測で 見られるようなプラズマ波動の励起に成功した。バウショックの 上流領域に おいては、プラズマ周波数付近に強く励起された静電波が見られた。 この波動は、上流側に反射されたイオンビームのドリフト速度とほぼ等しい位相速度を持つイオンビームモードであり、反射されたイオン ビームによるBeam-Driven不安定性によって励起されることが 分かった。線形解析の結果からもこの不安定性によって、プラズマ 周波数付近に最大成長率を持つイオンビームモードが励起される ことが確認された。バウショックの遷移領域においては、 ホイッスラー波、イオン音波、Slow X-mode波が励起された。 イオン音波の励起機構は、磁場に沿って下流側に加速された電子と 背景イオンのドリフト速度差によるCurrent-Driven不安定性である ことが分かった。また、イオン音波は遷移領域の下流側で強く励起 される。これは、下流側ほど電子のドリフト速度が大きく、温度が 冷たくなることによって、Current-Driven不安定性の成長率が大き くなるためである。Slow X-mode波の励起機構は、上流側に反射され たイオンビームが密接に関係していると考えられる。これは、この波 動が常にイオンビームのドリフト速度とほぼ等しい位相速度をもつ 波数と周波数で強く励起されているためである。遷移領域において イオンビームは、ホイッスラー波の磁場に対してほぼ垂直に上流側 へ直進する。このため、イオンビームのエネルギーが磁場に対して 垂直伝搬のSlow X-mode波に変換されると考えられる。二次元の計 算機実験においても、以上の波動は同様に励起された。
一方、準垂直衝撃波に対しても一次元の計算機実験を行った。準垂直衝撃波においては上流側に反射されたイオンビームは、磁場に垂直に進行 するためサイクロトロン運動を行い再び下流側に戻ってくる。上流 側に反射されたイオンが下流側に戻されるにしたがって、新たな ショックポテンシャルが形成され、そこで再びイオンを上流側に 反射する。上流領域においてイオンビームの存在する領域には、 常に静電波が励起される。この静電波の励起機構は上流側に 反射されたイオンビームと密接に関係していることが分かった。本講演では、これらの結果に基づいたバウショック周辺でのプラズマ波動励起メカニズムについて議論を行う。