太陽風磁場の金星、火星電離層への侵入過程

*陣 英克[1], 前澤 洌[1], 向井 利典[1]

宇宙科学研究所[1]

Mechanisms for the IMF penetration into the ionospheres of Mars and Venus

*Hidekatsu Jin[1] ,Kiyoshi Maezawa [1],Toshifumi Mukai [1]
Institute of Space and Astronautical Science[1]

Some spacecrafts have discovered that the IMF penetrates into the ionospheres of Mars and Venus, and that it forms large-scale and small-scale fields in the ionosphere. This large-scale field in the ionosphere is thought to have significant effects on the ionospheric structures, atmospheric escape, and so on. The penetration mechanism is, however, still not clear. We study the mechanism for the IMF penetrations into the ionospheres of Mars and Venus by using an MHD model that includes photochemical reactions in the ionosphere. We are going to report some results.

金星と火星は、地球にあるようなグロ−バルな固有磁場を持たない。 よって、太陽風は直接惑星電離層と相互作用をする。1970年後半か ら80年代にかけてのPVO(Pioneer Venus Orbiter)による金星観測 では、電離層内に太陽風磁場が浸入しているのが見られ、最近のMGS (Mars Global Surveyor)による観測でも、火星電離層に太陽風磁場 の侵入が見られている。このような大規模的な磁場の侵入は、電離層構 造、さらには惑星起源粒子の流出にも影響を及ぼし得るものであり、非 常に重要と思われる。
しかしながら、その磁場の侵入メカニズムについては、まだ明らかにさ れていない。磁場の侵入は、惑星大気と太陽風の圧力バランスに左右さ れる。PVO観測によると、太陽風磁場が大規模的に電離層内に浸入する のは、太陽風の動圧が電離層のガス圧と比べて大きくなるときであり、 同時に、ionopause(太陽風と電離層の境界)の高度は下がり、厚みが 増しているのが見られる。したがって、磁場浸入のメカニズムには電離 層下層における光化学反応や、粒子同士の衝突による磁場の散逸が効い てくるという可能性もある。ただし、PVO観測では、太陽風磁場は ionopause手前で一度せき止められたようなプロファイルをしているた め、磁場がionopauseを通過して電離層内に入ってくることを説明でき るメカニズムが必要である。
我々は、電離層の光化学反応を含めたMHDモデルで、磁場の電離層浸入 過程について調べている。当日は、その結果について報告する予定であ る。