EISCATレーダと多波長フォトメータ観測による降下電子エネルギーの研究 U

*足立 和寛[1], 藤井 良一[1], 野澤 悟徳[1]
山口 敏明[1], 大山 伸一郎[2], Asgeir Brekke[3]
Chris M. Hall[3], 小野 高幸[4]

名古屋大学太陽地球環境研究所[1]
通信総合研究所[2]
トロムソ大学理学部[3]
東北大学理学研究科[4]

Derivation of the energy spectrum of precipitating electrons using EISCAT and multi-wavelengths photometer observations II

*Kazuhiro Adachi[1] ,Ryoichi Fujii [1],Satonori Nozawa [1]
Toshiaki Yamaguchi [1],Shin-ichiro Oyama [2]
Asgeir Brekke [3],Chris M. Hall [3],Takayuki Ono [4]
Solar-Terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University[1]
Communications Research Laboratory[2]
Faculty of Science, University of Tromso[3]
Department of Astronomy and Geophysics, Tohoku University[4]

In February 2001, we newly installed a 4-wavelengths photometer at Tro mso. The photometer is designed to detect auroral emissions at wavelen gths of 427.8 nm, 630 nm, 670.5 nm and 844.6 nm. By taking ratios betw een some of these emissions, the average energy of the precipitating e lectrons can be derived. However, this optical ratio technique has not as yet been sufficiently ascertained. On the other hand, the EISCAT UH Fradar is able to derive the energy spectrum of precipitating electron s with electron density profile as well as atmospheric model. Our phot ometer is settled for simultaneous observations with EISCAT UHF radar. This October, we plan to update the photometer system and to install a n imaging system. In this paper, we will describe the photometer syste m anddiscuss the method of data analysis and preliminary results.

磁気圏から電離圏へ降下する電子やイオンは、磁気圏内のプラズマ の分布・運動や加熱過程、沿磁力線加速過程、電離圏におけるオー ロラの発光・運動や電離圏電流駆動に中心的な役割を果たしている 。そのため、降下電子・イオンのエネルギーやフラックスの空間・ 時間変動分布を定量的に知ることは磁気圏電離圏物理をより良く理 解する上で重要である。
降下粒子の観測は、従来から人工衛星により行われている。近年、 非干渉散乱(IS)レーダにより観測された電子密度の高度分布を用い て降下粒子エネルギーが導出されている [Fujii et al., 1995]。 人工衛星の観測は一点観測であること、ISレーダは非常に大型の観 測機であり現在極域に3箇所しか設置されていないことから、限ら れた領域での観測しか行えない。一方で、オーロラ特有の発光輝線 の強度を測定し比較することにより、降下電子の平均エネルギーを 求めることが出来る[Ono, 1993]。この観測機器は比較的安価であ るため、極域の多くの場所で実施することが可能である。しかし、 そこから得られるデータより導出される平均エネルギー等の物理量 の正当性は未だ定量的に確かめられていない。我々は、この手法の 検証のため、4波長分光型フォトメータとEISCATレーダの同時観測 を行っている。観測波長は427.8 nm(N2+ 1NG)、630.0 nm(OI)、 670.5 nm(N2 1PG)、844.6 nm(OI)である。
前回の発表(足立 他, 地球電磁気・地球惑星圏学会, 2001)では、 観測器とその観測システム、2001年2月に行った観測結果について 述べた。電子は磁力線に沿って降下してくるため、観測方向は観測 点における磁力線方向に固定し、EISCAT UHFレーダの磁力線方向の 観測モードと同時観測を行う。フォトメータの視野角はレーダと同 じ1.2度である。この観測では、観測地が遠隔であり観測者を常時 派遣できないことや、トロムソの晴天率の低さを考慮し、自動定常 観測システムを構築し用いている。フォトメータの主電源とシャッ ターをPCから制御している。また、光学機器の較正は、国立極地研 究所の積分球校正光源と分光面光源を用いて行った。
2001年10月、我々はフォトメータシステムの改良とデジタルカメラ を用いた画像取得システムの設置を行う。改良点は、光電子増倍管 に掛ける高電圧の調整をPCから行えるようになったことである。デ ジタルカメラは魚眼レンズ(f=16 mm)を用いて、オーロラの形状や 天候など解析時に有益な情報を取得する。
解析時に使用するオーロラの発光モデルは、Ono(1993)を基にして いる。Ono(1993)のモデルは、上部境界(500 km)での降下電子のエ ネルギースペクトルをGaussian分布とし、two-streamの仮定 [Stamnes ,1981]を用いて電子の輸送方程式を解き、各高度におけ る電子の分布関数を求めている。大気モデルはMSIS86を用い、化学 過程を考慮し各波長の発光強度を算出している。我々は、電子と中 性大気との衝突断面積や遷移確立などのパラメータを確認し、降下 電子のエネルギースペクトルを変化させ解析を行っている。
本講演では、改良された観測機器や観測システムの紹介を行い、 2001年10月に行った観測の解析結果を報告する予定である。
Reference
R. Fujii et al., J. Geomag. Geoelectr., 47, 771-782, 1995.
T. Ono, J. Geomag. Geoelectr., 45, 455-472, 1993