電磁気観測から推定した口永良部島火山の浅部構造

*神田 径[1], 田中 良和[2], 宇津木 充[2], 坂中 伸也[3]
森 真陽[1], Wahyu Srigutomo[4], 浅利 晴紀[4]
鍵山 恒臣[4], 井口 正人[1], 石原 和弘[1]

京都大学防災研究所[1]
京都大学大学院理学研究科[2]
秋田大学工学資源学部[3]
東京大学地震研究所[4]

Subsurface structure of Kuchierabujima volcano inferred from electromagnetic surveys

*Wataru Kanda[1] ,Yoshikazu Tanaka [2],Mitsuru Utsugi [2]
Shin'ya Sakanaka [3],Shin'yo Mori [1],Wahyu Srigutomo [4]
Seiki Asari [4],Tsuneomi Kagiyama [4],Masato Iguchi [1]
Kazuhiro Ishihara [1]
Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University[1]
Graduate School of Science, Kyoto University[2]
Faculty of Engineering and Resource Science,Akita University[3]
Earthquake Research Institute, University of Tokyo[4]

Electromagnetic observations were conducted at Kuchierabujima volcano, where phreatic eruptions were repeatedly occurred, as a part of the 2000 Joint Observation Campaign of Kuchierabujima Volcano. Variations of geomagnetic total intensity, magnetic structure, and electrical resistivity structure will be presented with some simulation results. Volcanic activity and hydrothermal system will be discussed from the point of view of volcanic structure in the shallow part.

1.はじめに
 口永良部島火山は、記録に残っている1841年の新岳の噴火以降、 数年から数十年の間隔で水蒸気爆発を繰り返してきた。最近では、 1980年の割れ目噴火を最後に噴火活動を休止しているが、1996年 および1999年に山頂部で火山性地震が群発したことから、今後の 火山活動の活発化も懸念されている。2000年度には全国の火山研 究者によって集中総合観測が実施され、多くの地球物理・地球化 学データが取得された。これまでに、京都大学が行っている地震 常時観測とあわせ、火山性地震は新岳火口直下数百mで起こって いることが明らかとなり、熱水活動との関連が議論されている (井口・他, 2001)。本講演では、集中総合観測で行われた全磁 力連続観測、空中磁気測量、比抵抗構造調査の結果について紹介 し、いくつかのシミュレーション結果などとあわせて、口永良部 島火山の浅部熱水系について考察する。

2.電磁気観測の概要と結果
 地磁気全磁力観測は、2000年8月より山頂部の3点で5分サンプリ ングの観測を行っている。水蒸気爆発発生場への、岩石の磁化が失 われるような高温の熱の供給を、地表の磁場観測から捉えることが 本研究の狙いである。新岳火口直下で磁化が失われた場合の磁場変 化を想定し、大きな変化が期待できる新岳火口の北側に1点、南側 に2点、オーバーハウザー磁力計を設置し、データは衛星通信を利 用して桜島へ転送している。2001年5月頃より、新岳南側の観測点 で全磁力値が減少傾向を示しており、熱消磁現象を捉えている可 能性がある。
 空中磁気測量は、鹿児島県の防災ヘリコプター「さつま」を使用 して2001年1月31日に実施した。山体の浅部磁化構造を推定するこ とにより、地上の全磁力連続観測とあわせて、火山活動に伴う熱磁 気的挙動を明らかにすることが目的である。これまでのところ、一 様帯磁(2.1A/m)を仮定した地形補正後のデータから、周囲より磁 化の弱い領域が新岳火口の南東側約500mに存在することが明らか となっている(宇津木・他, 2001)。これは、GPS観測から推定され ている地殻変動の力源の位置とほぼ一致する(井口・他, 2001)。
 比抵抗構造調査は、2000年12月4〜7日に実施され、火山体周辺 の合計13点でVLF・ELF帯のMT測定を行った(図)。水蒸気爆発や熱 の輸送に密接に関係する地下水の賦存状況を、火山体浅部の比抵 抗構造の推定により把握することが目的である。一次元構造解析 の結果、表層付近は数10〜数千Ωmの比抵抗値を示すものの、深 度数100mでは1Ωm以下の極めて低い比抵抗値を示すことがわかっ た。特に山頂部付近では、低比抵抗層までの深さが浅く、熱水系 の発達を示唆する結果かもしれない。