惑星近傍微弱光観測のための惑星ディスク遮蔽マスクの開発

*黒田 哲史[1], 岡野 章一[1], 坂野井 健[1]

東北大学惑星プラズマ・大気研究センター[1]

Development of an occulting mask for observations of feeble light emissions close to a planet disk

*Tetsuji Kuroda[1] ,Shoichi Okano [1],Takeshi Sakanoi [1]
Planetary Plasma and Atmospheric Research Center,Tohoku University[1]

When we try to make optical observation of feeble light emission close to a bright celestial object in the solar system, the strong scattered solar light of the main body disk becomes severe obstacle. Masking of the main body imaged on the first focal plane in an optical instrument will overcome this problem. We have started development of such optical mask for effective suppression of the scattered solar light.
The mask will be fabricated by vacuum evaporation method making thin film on a glass substrate. In order to prevent stray light arising from reflection and scattering by the mask itself, selection of evaporation material with low reflectivity, and a technique to make the thin film porous should be necessary.

木星イオプラズマト−ラス、イオ起源中性ナトリウム雲、月・水星 のナトリウム希薄大気など、太陽系内天体(あるいは太陽系外天体 )の微弱光現象の光学観測を行う際には、木星・月・水星などの主 天体の強烈な太陽散乱光が大きな障害となる。これを防ぐには、観 測に用いる光学系の第一焦点面上で主天体を隠せばよい。我々はこ れを実現するための光学機構(マスク)の開発を開始した。
 マスクの開発目標は、まず第一に主天体ディスクの直達光を遮蔽 できること(画像処理の手間を考え、淡くディスクが見える程度が 望ましい)。次に、マスクによる散乱光・回折光を最小限にとどめ ることである。すなわち、その値を観測する微弱光現象と主天体間 の角距離と、その角距離での主天体による地球大気のRayleigh散乱 ・Mie散乱強度と観測対象微弱光強度との比から決定される値以下 まで抑えられるようにすることを目標として開発を行う。マスクに よる散乱はマスクの縁(厚み部分)において生じるのでマスクはで きるだけ薄く作ることが必要である。また、回折光の影響を軽減す るためにマスク形状を工夫する必要がある。これらを考慮して、マ スクの濃度・構造に変化がつけやすい光学ガラス上にマスクパター ンを配置する方法を採用する。マスクパターンは、金属等の薄膜を 真空蒸着させて製作する。真空蒸着法は薄膜厚を非常に薄くするこ とが可能で、散乱光の防止に有効である。しかし、単なる真空蒸着 では薄膜表面が鏡面状になってしまい、迷光やゴーストを生じてし まう可能性がある。そのため蒸着物質に反射率の低いものを使用し たり、不活性ガス雰囲気中での蒸着により、蒸着膜を多孔質構造に するなどの工夫を加えることを計画している。我々はこの実験のた めに真空蒸着装置の製作を行っているが、既にマスクの性能測定の ための光学暗室の設置を終えた。
 このマスクは、現在製作の最終段階にある広視野単色カメラを用 いた月のナトリウム希薄大気や木星ナトリウム雲の観測に使用され る予定だが、このマスク製作技術は太陽系内微弱光現象の地上・衛 星観測に広く応用可能な汎用性の高いものである。